研究課題
近年Ablチロシンキナーゼ阻害剤が血管内皮細胞接着を維持し、血管透過性亢進を抑制することが報告された。血管内皮障害は虚血再灌流障害でも重大な発症要因である。分子標的薬を移植領域に応用する研究は過去にないので、Ablチロシンキナーゼ阻害剤が虚血再潅流肺障害に対する新たな治療選択肢になり得るか、移植領域に応用可能かを検討した。肺移植臨床を念頭に、ⅰ)臓器保存、ⅱ)障害のあるドナー肺(マージナルドナー肺)に関する研究を行ってきた。ⅰ)においては、トレハロースを有する細胞外液型臓器保存液を開発し、すでに臨床に応用され、良好な成績を得ている1,3。ⅱ)においては、主に心臓死ドナーからの臓器提供を想定し、虚血再灌流肺障害の軽減方法や体外肺潅流装置を用いた障害肺(いわゆる、マージナルドナー肺)の治療等につき検討し報告してきた1。さらに虚血再灌流肺障害発症のメカニズムの解明や効果的な治療戦略の改善のために、近年明らかにされつつある血管内皮細胞の血管透過性に関わる分子制御機構に注目した。トロンビン・Vascular Endothelial Growth Factor(VEGF)等の血管透過性を亢進させる因子の刺激下で、イマチニブが血管透過性亢進を抑制することが報告されており、イマチニブのAbl/Arg阻害作用により血管内皮接着分子であるVECが維持され、血管透過性亢進を抑制することが明らかにされた。よってイマチニブを代表とするAblチロシンキナーゼ阻害剤が虚血再灌流肺障害に対する新たな治療選択肢になりうるかを研究目的とし、メカニズムや治療方法の検討に、分子生物学的な知見を反映させ、臨床応用への可能性を検討するために、詳細な肺生理学的データの測定と分子生物学的評価の双方が可能となる小動物を用いたin vivoの肺障害モデルを確立する途中である。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 7件、 オープンアクセス 4件) 備考 (1件)
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http://www.thoracic-kyoto-u.gr.jp