研究課題/領域番号 |
16K10681
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
宗 淳一 岡山大学, 大学病院, 講師 (90559890)
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研究分担者 |
三好 新一郎 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00190827)
冨田 秀太 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (10372111)
佃 和憲 岡山大学, 大学病院, 講師 (20346430) [辞退]
豊岡 伸一 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (30397880)
山本 寛斉 岡山大学, 岡山大学病院, 助教 (40467733)
阪口 政清 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (70379840)
浅野 博昭 岡山大学, 大学病院, 助教 (70534775) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | HER2 / サイトケラチン19 |
研究実績の概要 |
HER2蛋白は、肺癌・乳癌などの腫瘍で活性化している。既存のHER2分子標的薬は効果や薬剤耐性の問題があり、HER2活性化腫瘍への新しい治療戦略が求められている。申請者らは、細胞骨格の中間フィラメントの一つであるサイトケラチン19(CK19)がHER2蛋白に細胞内で直接結合し、HER2蛋白・下流シグナルを活性化することを見出しており、本研究は、HER2-CK19相互結合に注目したHER2活性化腫瘍の治療戦略を開発することを目的とした。初年度は、肺癌におけるHER2-CK19の細胞内局在、HER2-CK19相互活性に関連する遺伝子群の同定を行い、RNA干渉を用いたCK19抑制実験をin vitroで行い、肺癌において一定の腫瘍増殖抑制効果を認めた。今年度は、パスウエイ解析・Gene Set Enrichment解析によりHER2-CK19共発現の関連経路として同定したRAS-Erk経路の抑制実験を、Erk活性化を認めるEGFR-TKI耐性株で行った。また、派生的な研究として、HER2活性腫瘍に対する新規TKIの治療効果を検討した。 1)HER2活性はEGFR-TKI耐性化と関与(Cancer Discov. 2(10): 922-33)し、HER2-CK19共発現の関連経路の一つとしてRAS-Erk経路が同定されたことに着目し、Erk活性化を示したEGFR-TKI耐性株に対し、近年注目されるMEK阻害剤Trametinibの効果を検討し、MEK/PI3Kを同時阻害するcombination療法が有効であることを同定した。 2)HER2分子標的薬(Afatinib)の治療効果を胃癌細胞株でin vitro・ in vivoに検討して報告した。さらにAfatinibの適応を有しない腫瘍において網羅的遺伝子解析によりHER2変異を同定し、その臨床効果を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HER2-CK19共発現に関連するパスウェイとして、RAS-Erk経路・炭素代謝経路を同定し、RAS-Erk経路阻害剤であるMEK阻害とPI3K阻害のcombination療法が、EGFR-TKI耐性株に対して、有効であることを同定した(現在、投稿中)。また、HER2活性型腫瘍に対する新規HER2阻害の治療効果と耐性化について検討し、HER2活性型腫瘍に関する研究を進めることはできたが、HER2-CK19活性に特化した有用な阻害療法の同定までは至っていないため。今後は、さらにドラッグリポジショニング解析を行い、HER2-CK19阻害効果を示す新規薬剤の同定とその効果の検討を試みる。
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今後の研究の推進方策 |
申請者らの既報でも、HER2-CK19活性型腫瘍ではErk活性が認められるため、MEK阻害剤および他の阻害剤(PI3K阻害など)とのCombination療法について、EGFR-TKI耐性株のみならず、HER2-CK19活性化腫瘍に対して、その可能性を検討する。また、HER2活性型腫瘍におけるHER2阻害剤に対する薬剤耐性克服に対する取り組みも考慮する。 ドラッグリポジショニング解析・発現解析よりHER2-CK19活性阻害作用に特化した新規候補薬が同定できれば、単剤およびCombination療法を試みて、その効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画どおりに使用していたが、細胞培養試薬を購入するのに不足が生じたため。 次年度の交付額と合わせて、細胞培養試薬を購入する予定である。
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