研究課題
人工赤血球が小粒子径で高い酸素運搬能力があることに注目した。肺移植で重篤な合併症である移植肺の虚血還流肺障害を防止・抑制するか、A.ラット肺虚血再還流モデル、B.ラット肺移植モデルで検証し、臓器保護効果を明らかにすることで臨床応用へと繋げることを目的とした。C.酸素運搬能によってラット摘出肺を常温で48時間維持可能か、長期的な臓器保護効果を検証した。研究の過程でD.肺の酸素化能を測定できる試験薬としての能力に着眼し、再生肺モデルで再生肺の酸素化能力を測定可能かを検討した。A.グラフトの病理学的・機能的検討において、虚血再還流障害の程度にHbV投与による差は認められなかった。A-1. HbVとEpTU液を1:1~1:9で混和した保存液中に肺を12時間4℃で保存したが組織障害抑制効果は認められず。現在の保存液では冷保存状態12時間程度ではARBCの効果を必要とする程組織障害が抑制されている事を示唆した。還流のない人工赤血球内の酸素は消費され臓器保存に影響を与えていなかった。B.上記の結果肺移植モデルについては作成せず。C.配合還流液による肺保護の有用性の証明を組織学的検討で行い、アポトーシス関連遺伝子のreal-time PCR法を行いアポトーシスが抑制されることを証明した。この結果は人工赤血球を用いた新還流システムが肺保護に繋がる第一歩と考えた。一方48時間還流で人工赤血球は組織内に入り肺水腫となった。還流液浸透圧調整の必要性が示唆されたが、人工赤血球のサイズ問題からAir-blood バリアーを通過して肺胞内に漏出してしまうとも推察された。人工赤血球は現時点では肺の特性に合わず肺組織への長期使用には不向きであることが示唆された。D. 人工赤血球は人工肺で還流可能である。ラット摘出肺、再生肺ともに換気で人工赤血球溶液は酸素化され肺拡散能をex vivoで検査するモデルとなりうる。
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Organogenesis
巻: 14 ページ: 94-106
doi: 10.1080/15476278