研究実績の概要 |
[目的] 肺腺癌における免疫関連分子の包括的遺伝子発現解析を行い、腫瘍組織局所免疫状態について明らかにする。さらに免疫関連分子の発現と臨床病理学的因子、ドライバー遺伝子変異の有無、予後との相関を明らかにする。 [方法] 肺腺癌切除例71例を対象に、 Cap Analysis of Gene Expression(CAGE)法を用いて、エフェクターT細胞に発現している共刺激分子(CD28, OX40, GITR, CD137, CD27, HVEM)、 共抑制分子(CTLA-4, PD-1, TIM-3, BTLA, VISTA, LAG-3)、PD-L1、PD-L2、腫瘍浸潤免疫細胞のマーカー(CD4, CD8, CD25, FoxP3, CD68, CD204)などについて包括的な遺伝子発現解析を行って、RNAレベルでの腫瘍組織局所免疫状態を評価する。 [結果] 肺腺癌はほとんどのすべての免疫関連分子が高発現しているimmunoreactive tumorと低~中等度発現のnon-immunoreactive tumorの2群に分類された。Immunoreactive tumorは、共刺激分子も共抑制分子も同時に高発現していた。Immunoreactive tumorは、組織学的悪性度やEGFR遺伝子変異の有無に関わらず、non-immunoreactive tumorに比べて予後不良であった。免疫関連分子の中で、CD137、TIM-3、HVEMの高発現は有意な予後不良因子であった。CD137とCD25、TIM-3とCD204、HVEMとCD204/CD68の発現に正の相関が認められた。 [結論] 肺腺癌は免疫関連分子の発現状態によって、予後不良なimmunoreactive tumorと予後良好なnon-immunoreactive tumorの2群に分類できる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)肺扁平上皮癌における免疫関連分子の包括的遺伝子発現解析 本年度と同様の解析を肺扁平上皮癌に対して行い、腫瘍組織局所免疫状態について明らかにし、肺腺癌との対比を行う。 (2)多重免疫染色による腫瘍組織局所免疫状態の評価 組織マイクロアレイ(肺癌切除例1000例)を用いて、リンパ球表面マーカー(CD4, CD8, CD25等)やリンパ球転写因子(FoxP3, Gata3, Tbet, RORgt),チェックポイント関連蛋白(CTLA-4、PD-1、PD-L1等)、 マクロファージマーカー(CD68、 CD204等)、癌細胞の形質発現(MLH1、MSH2、HLA class I等)について多重免疫染色を行って、タンパクレベルでの腫瘍組織局所免疫状態を評価する。
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