研究実績の概要 |
本研究の目的は、1. 炎症性シグナルの網羅的解析により肺癌前転移ニッチ関連バイオマーカーを特定する。2. 肺癌前転移ニッチ関連バイオマーカーのうち術後 転移危険因子(=治療標的分子)を特定する。3. 病理組織検体の詳細な検索により治療標的分子の責任細胞(=治療標的細胞)を特定する。である。 平成28年度には、炎症性シグナル網羅的解析による肺癌前転移ニッチ関連バイオマーカーの特定を行った。まず、肺癌手術症例のうち約500例 について、その病理所見を病理医とともに再検討し2015年版の肺癌WHO分類に照合し浸潤径を測定した。またそれぞれの標本について、RNA抽出用の薄切切片を作成した。 平成29年度には解析対象の後方視的調査などを行い、データベースを構築した。この結果判明したこととして、総じて脈管侵襲陽性症例が多いために、脈管侵襲陰性症例と比較した場合に恣意的な症例選択となりえ、その他の臨床病理学的情報が偏ることが懸念された。したがって、まず腺癌のうち病理学的にN0M0のもの(病理病期 I期)について、予後良好群11例と予後 不良群(早期の遠隔転移再発あり)10例をnCounter PanCancer Immune Profile Panelで網羅的遺伝子発現解析を行い、前転移ニッチ関連バイオマーカー候補遺伝子を複数同定した。この成果は平成30年5月の日本呼吸器外科学会において発表した。 平成30年度には、さらに症例を増やし予後良好群16例、予後不良群16例での比較検討を行った。その結果CHP1, PTGDS, PTRF, CXCL12などを前転移ニッチ関連バイオマーカー候補遺伝子として同定し、この成果を第19回世界肺癌学会で発表した。
|