研究実績の概要 |
非小細胞肺癌に対するPD-1/PD-L1を標的とした免疫チェックポイント阻害剤は、その予後を改善させたが、奏効率は20-30%の症例にとどまる。よって、免疫チェックポイント阻害剤の効果予測因子や耐性機序に関する研究は非小細胞肺癌の予後改善に大いに寄与しうる。本研究は、非小細胞肺癌におけるEGF family シグナルの免疫逃避への影響を、NK細胞活性化受容体NKG2Dや免疫抑制分子PD-1に対するリガンドの発現制御機構を中心に解析することで、これらの免疫調整分子の発現制御を利用した新たながん免疫療法開発のシーズとなることを目的とした。 H31年度は、これまでに得られた実験データの解析と論文化に重点をおいて研究活動を行った。非小細胞肺癌細胞株を用いてEGFならびにIFNγによるPD-L1発現機構とその抑制方法について検討を行い、JAK-STAT阻害剤にIFNγによるPD-L1発現を阻害する作用があることを確認、学会において報告した。また、臨床検体を用いた研究として、術前化学療法を施行された非小細胞肺癌患者の治療前後の組織標本を用いて免疫染色法によりPD-L1やNKG2Dリガンドの発現を評価し、化学療法後にPD-L1発現は上昇、NKG2Dリガンド発現は減弱する症例が多いことを明らかにし、英文原著論文として掲載に至った (Okita R, et al. Oncol Rep 42: 839-48, 2019)。さらに、非小細胞肺癌切除例における各種NKG2Dリガンドの発現パターンについてクラスター分類を行い、特定の発現パターンを示すグループにおいて予後が不良であることを見出し、英文原著論文として報告した(Okita R, et al. Oncotarget 10: 6805-15, 2019)
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