研究課題
本研究の目的は、肺癌の中でも特に悪性度が高い肺多形癌(pleomorphic carcinoma)を対象とし、高悪性度の元凶と考えられる紡錘形細胞/巨細胞成分の出現に関与する分子病理学的因子を明らかにすることで、新規治療開発への道筋をつけることである。本年度、研究代表者が所属機関異動となったため、新規所属機関での対象症例を新たに抽出する必要が生じた。新規所属機関での対象症例数は、申請時所属機関の対象症例数よりも少ないことが予想されたため、新研究計画では、対象を、肺多形癌を含めた肺肉腫様癌(多形癌、紡錘細胞癌、巨細胞癌、癌肉腫、肺芽腫)全般に広げることとした。その結果、1996年から2014年の間に新規所属機関で切除された原発性肺癌1808例中、肺肉腫様癌が23例 (1.3%) 抽出され、これを新研究計画の対象とすることとし、臨床病理学的背景を明らかにした。対象症例の手術時年齢中央値は65歳 (範囲: 39-79)。男性13例 (57%) で、喫煙歴を18例 (78%) に認めた。組織型は多形癌20例 (87%)、巨細胞癌3例 (13%) であり、腫瘍径中央値は5.7cm (範囲: 1.5-15)と大型の腫瘍が主体であった。 病理病期はIB / IIA / IIB / IIIA / IIIB / IV期がそれぞれ4 / 4 / 5 / 7 / 1 / 2例。術後観察期間の中央値は122ヶ月 (範囲: 1-249) で、5年無再発生存割合は56%。再発は8例 (35%) に認めたが、そのうち7例は術後1年以内の再発 (胸膜播種4例、多臓器転移2例、脳転移1例) で、再発後生存期間中央値は3ヶ月 (範囲: 1-14) と極めて短期間であった。一方、5年無再発生存を6例 (26%) に認め、うち4例は病理病期IIA期以上の進行病期であった。以上より、肺肉腫様癌の切除例には、早期再発を来たし再発後予後も不良な集団がある一方で, 比較的予後良好な一群も存在することが示唆された。
3: やや遅れている
研究代表者が所属施設異動となり、新規所属機関にて新たな研究計画を作成する必要が生じたため。
新規所属機関において、1996年から2014年の間に切除された肺肉腫様癌23例 (原発性肺癌1808例中1.3%) の検討の結果、多形癌を主体とした肺肉腫様癌には、術後早期再発を来たし再発後予後も不良な集団がある一方で, 比較的予後良好な一群も存在することが示唆された。今後は、当初の計画に基づき、肉腫様肺癌を構成する紡錘形細胞/巨細胞成分と非小細胞癌成分の分子病理学的相違を検討することに加え、今回明らかとなった、予後不良群と予後良好群の分子病理学的相違にも着目して、肉腫様肺癌の悪性度を規定する因子の同定を進めて行く方針である。具体的には、紡錘形細胞/巨細胞成分および非小細胞癌成分ならびに非癌部分からゲノムDNAを抽出し、ターゲットシークエンスにて紡錘形細胞/巨細胞成分に特異的な遺伝子異常ならびに、予後不良群と予後良好群での遺伝子異常の相違を明らかにする。また、免疫チェックポイント関連蛋白 (腫瘍細胞でのPD-L1, PD-L2発現、腫瘍胞巣内でのCD8+Treg) ならびに、DNAメチル化の情報も加えた統合的な解析も行い、肺多形癌を主とした肺肉腫様癌の悪性度を規定する因子を同定する。
研究代表者の所属機関が変更となり、新規所属機関にて新たに研究計画を策定することとなった。そのため、本年度購入予定であった物品(抗体、遺伝子解析キット)の購入が翌年度となったため、次年度使用額が生じた。
新規所属機関で抽出された解析対象23症例に対する、遺伝子解析ならびに免疫組織染色のコストとして使用する予定。
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