研究課題/領域番号 |
16K10701
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高浪 健太郎 東北大学, 大学病院, 助教 (90447160)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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キーワード | 胸管 / 健常者 / 安全性確認 |
研究実績の概要 |
これまで申請者が報告した経口放射性薬剤を用いた3次元胸管シンチグラフィを応用して、乳糜胸の診断、予後評価法を確立する研究に関して、昨年度の基礎実験の結果を基に、今年度は健常者を対象とした3次元胸管シンチグラフィの安全性、胸管描出における有効性の検討を行った。本検査では、日常臨床で心臓核医学検査に保険適応である長鎖脂肪酸15-(4-iodophenyl)-3(R,S)-methylpentadecanoic acid(BMIPP)に放射性ヨードをラベリングした放射性薬剤を、適応外使用で被験者に経口投与する。薬剤を封入するカプセルは、基礎実験の結果からゼラチンカプセル(カプスゲル社)を用いることで、投与後に胃内で薬剤が放出する事が予想されていた。院内の倫理委員会承認後、健常者を対象とした検討を行った。計6名の健常被験者を対象として、2重のゼラチンカプセルに封入したBMIPP液を経口投与し、ガンマカメラで断続的に撮像した。検査に伴う有害事象は認められなかった。検査前のカプセル封入作業を早めに行った1例で、投与前にカプセル3個のうち2個が癒着し投与できなくなるトラブルがあったが、カプセル1個を投与し、やや画像が不明瞭ではあるものの検査を問題なく遂行できた。その後、検査前のカプセル封入作業は直前に施行するようにし、同様のトラブルは認められなかった。個人差はあるものの全例で胸管が明瞭に描出された。経口放射性薬剤を用いた3次元胸管シンチグラフィは、薬剤をカプセルに封入して投与した場合でも、安全に施行可能であることが確認できた。また、鎖骨上窩の放射線量をγプローブで断続的に計測することで、撮像タイミングを簡便に予測する方法を見つけることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度が年度途中での追加採択のため、当初の計画より後ろにずれているが、予定していた健常者を対象とした基礎的検討が完了し、概ね計画通りである。予定していた乳糜胸に対する術前症例を対象とした3次元胸管シンチの臨床研究に関しては、次年度に改めて院内の倫理委員会に申請し、承認後、乳糜胸の術前症例を対象とした3次元胸管シンチを行うことで、十分に症例を集積可能と考える。プロトコル修正と確立漏出部位同定の精度、予後予測能の評価を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の健常者を対象とした3次元胸管シンチグラフィの結果から、本検査の投与方法、撮像タイミング、撮像条件等を確立する。本検査の安全性、胸管描出における有効性が確立されたことから、これらの成果を基にして、今後、臨床における乳糜胸に対する術前症例を対象として、3次元胸管シンチグラフィを用いた臨床研究を開始する。院内の倫理委員会の承認後、乳糜胸の術前症例を対象とした3次元胸管シンチを開始し、適宜プロトコル修正を行いつつ、本検査を用いた乳糜胸の原因となる胸管損傷部位の検出、乳糜胸の重症度の評価の安全性、予後予測の有効性を明かにする。目標症例は10例前後を予定しており、残り2年の研究期間内に十分に達成可能と考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度が追加課題採択だったため、全体的に研究計画が半年程度ずれていることや、当院の倫理委員会のシステムが変更され、審査が大幅に遅れたため、予定していた乳糜胸の術前症例を対象とした3次元胸管シンチの検査費用等が生じなかったためである。29年度に予定し行うことができなかった乳糜胸の術前症例を対象とした3次元胸管シンチの検査費用、関連学会での情報収集や研究成果の中間報告のための出張費として使用する予定である。
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