研究実績の概要 |
胸腺上皮性腫瘍(胸腺腫55例,胸腺癌11例:type A 8, type AB 19, type B1 5, type B2 15, type B3 6, metaplastic thymoma 2, thymic carcinoma 11)について,PD-L1発現を抗PD-L1モノクローナル抗体SP263を用いて免疫染色にて調べた.また,通常の目視評価に加え,Whole Slide Imaging法により客観的評価も加え,目視法との相関の有無を確認した.さらに,評価対象症例の臨床経過を調べ,PD-L1発現レベルと予後(無再発生存および全生存)との相関関係を解析した. 結果として,①Whole Slide Imaging法は胸腺腫においては目視法と相関し有用であったが,胸腺癌においてはばらつきを認めた.②胸腺上皮性腫瘍の組織学的悪性度とPD-L1発現レベルは相関した.③PD-L1高発現と病期との間に有意な相関関係を認めた.④PD-L1高発現症例は,無再発生存および全生存期間が短く予後不良であった. 以上の結果から,比較的稀な悪性縦隔腫瘍である胸腺上皮性腫瘍では,PD-L1発現レベルは,ひとつのバイオマーカーとなりうることが明らかになった.今後,この免疫チェックポイント分子の発現レベルが,腫瘍免疫療法の標的となりうるか否かを検証する必要がある. 本研究内容は,日本胸部外科学会総会,および世界肺癌学会にて発表し,現在,論文投稿準備を進めている段階である.
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