研究課題/領域番号 |
16K10708
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鐙谷 武雄 北海道大学, 大学病院, 助教 (80270726)
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研究分担者 |
小松 晃之 中央大学, 理工学部, 教授 (30298187)
中山 若樹 北海道大学, 医学研究科, 講師 (40421961)
数又 研 北海道大学, 大学病院, 講師 (60634144)
七戸 秀夫 北海道大学, 大学病院, 准教授 (80374479)
寳金 清博 北海道大学, 大学病院, 教授 (90229146)
長内 俊也 北海道大学, 大学病院, 助教 (90622788)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 人工酸素運搬体 / 虚血再灌流傷害 |
研究実績の概要 |
ラット一過性中大脳動脈閉塞モデル(tMCAO)において、再灌流時にHemoActを再開通動脈に灌流し、HemoActの脳保護効果、微小循環における灌流状態を検討した。雄SDラットで糸栓子によるtMCAO (2時間虚血)を行い、Control(再灌流のみ)群、Vehicle(PBS灌流)群、0.5x HemoAct投与群、HemoAct投与群の4群を作成した。24時間後に18 point scaleで神経症状を評価後に、脳を摘出してTTC染色で脳梗塞/浮腫体積を測定、さらに患側脳組織から抽出した蛋白サンプルを用いてWestern blottingを行い、MMP-9の発現、活性酸素の産生(4-HNE)を検討した。また、再灌流後0、2、6時間でのタイムコース実験で、微小血管の形態の変化(vWFの免疫染色)、微小血管でのHemoActの灌流状態(HemoActを認識する抗体での免疫染色)を検討した。 その結果、神経症状はHemoAct投与群で他の3群に対して有意に軽かった。脳梗塞/浮腫体積は、Control群:55.2%/26.4%、Vehicle群:53.2%/27.1%、0.5x HemoAct投与群:27.1%/15.2%、HemoAct投与群:20.2%/14.1%であり、HemoAct投与群でControl群、Vehicle群に対して有意に小さかった。MMP-9発現、活性酸素産生もHemoAct群で有意に抑制された。また、HemoAct群とControl群の2群で比較したタイムコース実験では、HemoAct群では再灌流6時間の時点で微小血管狭小化が抑制され、また同じタイムポイントで微小血管内でのHemoActの良好な灌流状態が確認できた。以上の結果より、HemoActは脳の虚血再灌流状態において、微小循環を改善することで脳保護効果を発揮するものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画の通り、脳の虚血再灌流の動物モデルにおいて、非冷却状態の37℃のHemoActを投与して、同薬剤の持つ脳保護効果についての基礎的データを取得することが出来た。そして、その脳保護効果が、虚血再灌流領域において、脳微小血管の狭小化が抑えられること、またHemoActが赤血球より良好な灌流状態を示すこと、に関連していると考えられた。これらの結果は国内主要学会、国際学会にて発表することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度のデータを基に、冷却HemoActの投与による局所脳低温+酸素化療法の効果検討と治療の最適化のための検討を行う。最大の脳保護効果を得るために投与方法の条件設定(投与量、投与時間、冷却温度、等)を検討し、さらにtherapeutic time windowの延長効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は比較的順調に実験が進行したので、費用を抑える方向で実験を進めた。この節約できた分については、平成29年度以降に使用することを考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度以降は、本治療法の①最適投与条件の設定と②治療可能時間域の検討のために、多数の条件設定をした上で実験を行う必要がある。このため動物、試薬の必要量が前年度より増加することになる。また、研究打ち合わせの旅費の使用を考えている。
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