研究課題
前年度に行った非低温条件下、すなわち、37℃HemoAct投与での脳保護効果について実験結果が出そろったので論文を作成し、これを海外誌Strokeに掲載することができた。37℃HemoAct投与で梗塞は36%まで縮小していたが、この治療効果のメカニズムについては、再灌流早期の時間帯(再灌流6時間以内)において、HemoActが自己赤血球に比べて微小血管での灌流が良好あることが関連していると考えられた。また、脳微小血管内皮細胞を用いた培養実験の結果からは、HemoActには抗酸化作用があり、これは、HemoAct中のアルブミンの抗酸化作用による可能性が考えられた。我々が過去に行ってきた別の人工酸素運搬体であるLEHの投与実験と比較してみると、HemoActの方がより強い脳保護効果があったが、これについては前述のHemoActには抗酸化作用が関連していると考えられた。今年度は冷却HemoActの投与による脳保護効果の検討を中心に行った。実際の方法としては、糸栓子による中大脳動脈の2時間虚血後の再灌流の時点で、10℃に冷却したHemoActを再開通動脈から6ml/㎏で投与した。この人工酸素運搬体投与+冷却灌流のcombination therapy群を、10℃生理食塩水の同量投与、37℃HemoActの同量投与の二つmonotherapy群と、未治療コントロール群と比較して、どれだけの治療効果が得られるかを検討した。その結果、二つmonotherapyよりも、combination therapy、すなわち、10℃HemoAct投与の方が梗塞体積の縮小、脳血流量低下の抑制により働く傾向にあることが分かった。次いで、このcombination therapyの治療効果がどれくらい続くかを検討し、少なくとも7日目までは神経障害度の改善、梗塞体積の縮小に働くことが分かった。また、therapeutic time windowの延長効果の検討では、虚血時間が4時間、5時間までは治療効果があることが分かった(6時間では効果消失)。
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Stroke
巻: 49 ページ: 1960~1968
10.1161/STROKEAHA.118.021467