研究課題/領域番号 |
16K10719
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
青木 友浩 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (40633144)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脳動脈瘤 / 慢性炎症 / T細胞 / クモ膜下出血 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、T細胞機能が脳動脈瘤の少なくとも形成には関与しないという平成28年度の結果を踏まえ、ではT細胞機能が脳動脈瘤の最大の問題点である破裂によるくも膜下出血に寄与しているのかという点を検討する目的で自然破裂によりくも膜下出血を発症するモデルの確立を行った。結果、既報を参考にしつつエストロゲン欠乏、血流ストレス負荷増大、炎症惹起物質の投与、血管壁の脆弱化亢進等を組み合わせることにより脳動脈瘤の発生率は半数程度であるが一旦誘発された病変が半分以上の確率で自然破裂によるくも膜下出血を発症するモデル動物を確立した。ここで、本モデル動物の有用な点として、脳動脈瘤形成部位である脳血管分岐部を直接手術操作することなく脳動脈瘤の発生と自然破裂を達成していることである。そしてその点でヒトのクモ膜下出血発症をよく模倣していると言える。そして、本モデル動物を使用してT細胞欠損ラットを同モデル動物に供するのに先立ち免疫組織化学にて未破裂、破裂両病変部におけるT細胞浸潤の程度につき予備検討としての検証を開始した。予備的結果として、T細胞は破裂脳動脈瘤病変内においてもマクロファージと比較するとごく少数しか存在しなかった。よって、脳動脈瘤破裂に対してT細胞機能が寄与することは否定的であると示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳動脈瘤の発生から破裂までの各段階におけるT細胞機能の寄与の検討が順調に進んでおり、発生と進展についてはすでに論文公表済みである。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに実施した検討から、薬剤ないしは自然変異ラットでのT細胞機能欠損により脳動脈瘤病変内での炎症細胞分画や病態形成を制御することが明らかとなっている炎症反応の制御因子群が影響を受けない事、脳動脈瘤の発生と増大が影響されない事が明らかとなっている。そのために、H30年度は脳動脈瘤の破裂にT細胞機能が寄与するかにつきH29年度に樹立した脳動脈瘤自然破裂によるくも膜下出血モデルを使用し検証する。本検証では、破裂および未破裂脳動脈瘤病変内でのT細胞およびその分画の存在とその数量的な変化、質的な変容を免疫組織学的に検証する。引き続き、脳動脈瘤破裂にT細胞機能が寄与することが示唆された場合はT細胞欠損ラットを自然破裂によるくも膜下出血モデルに供し破裂率や病変部での炎症反応への影響を検証する。
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