昨年度までに明らかとしたT細胞機能が脳動脈瘤の少なくとも形成と進展には関与しないという研究結果を踏まえ、T細胞機能が脳動脈瘤の最大の問題点である破裂によるくも膜下出血に寄与しているのかという点を検討する目的で自然破裂によりくも膜下出血を発症するモデルの確立を継続して行った。結果、エストロゲン欠乏、血流ストレス負荷増大等を組み合わせることにより脳動脈瘤の発生率は半数程度であるが一旦誘発された病変が半分以上の確率で自然破裂によるくも膜下出血を発症するモデルラットを確立した。また、病理組織学的検討で、誘発した脳動脈瘤が平滑筋の菲薄化やマクロファージをはじめとした炎症細胞浸潤、内弾性板の断裂といったヒトの脳動脈瘤の病理学的特徴を有していることを明らかとした。そして、免疫組織化学にて未破裂、破裂両病変部におけるT細胞浸潤の程度につき検証を行った。結果、T細胞数は好中球とは異なり破裂脳動脈瘤病変で有意な増加を来さなかった。そのため、T細胞機能の脳動脈瘤破裂に対する寄与は限定的であることが想定された。
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