研究課題
脳梗塞は日本人の死因で割合が高く、一命をとりとめても何らかの機能障害を残すことの多い疾患である。しかしながら、有効な治療法は発症初期を対象としたもので、発症後時間が経過した後の治療法はほとんどない。従って、脳梗塞の病態進行のメカニズムを解明することが、発症後期でも効果的な治療法の開発につながる可能性がある。生体マウスの中枢神経系内の細胞移動を単一細胞レベルで連続的に追跡することのできる超高磁場11.7T MRI(磁気共鳴イメージング)を用いて、脳梗塞発症後のモデルマウスを撮影した。MRIにより観察可能な造影剤(磁性粒子)を用いて細胞動態を観察した。その結果、脳虚血障害領域と細胞動態追跡画像を組み合わせることにより免疫細胞が浸潤する様子を観察することができた。この技術によりin vitroのみならずin vivoでも非侵襲的に1細胞レベルでの動態追跡が可能となった。この技術は、脳内の免疫細胞動態を捉える新しい免疫活動評価方法であり、免疫細胞と病態形成の関係性及び病態形成機序の解明につながる可能性がある。次に、上記の技術で観察された脳梗塞発症後期に梗塞巣へ出現してくる免疫細胞が病態進行に及ぼす影響について分子細胞レベルでの検討を行った。脳梗塞発症後、予後良好または不良ラットの脳における遺伝子発現の違いを解析した。その結果、梗塞巣に集積する2種類のマクロファージうち、予後不良ラットでは常在性マイクログリア由来マクロファージ(MG-MΦ)の占める割合が高く、予後良好ラットでは骨髄由来の浸潤性マクロファージ(BM-MΦ)の占める割合が高いことを発見した。以上の結果から、脳梗塞巣に集積するMG-MΦとBM-MΦの構成比率が脳梗塞後の予後を左右する可能性が示唆された。
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Scientific Reports
巻: 10 ページ: 1877
10.1038/s41598-020-58894-8.