研究課題/領域番号 |
16K10723
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
菱川 朋人 岡山大学, 大学病院, 助教 (60509610)
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研究分担者 |
平松 匡文 岡山大学, 大学病院, 助教 (50771953)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | くも膜下出血 / 脱分極 / 脳波 |
研究実績の概要 |
SDラットに全身麻酔を行い腹臥位で環椎後頭間膜を露出し大槽に30G針つきチューブを留置。続いて開頭を行い脳表にdirect currency (DC)電極(皮質電位測定)、レーザードップラープローベ(脳血流測定)、頭蓋内圧センサー(脳圧測定)、骨表に脳波電極(脳波モニタリング)を設置した。採取しておいた自己血を環椎後頭間膜から注入し、くも膜下出血モデル(single injection model)を作成した。皮質電位測定において脱分極時間を脱分極からコントロール値の80%まで回復した時間と定義した。さらに脳波抑制時間を脳波が減弱してからコントロール値の40%まで回復した時間と定義し、脱分極時間と脳波抑制時間の関係を評価した。くも膜下出血モデル作成後1週間で脳の灌流固定を行いHematoxylin-Eosin染色でDC電極部の組織障害を評価した。具体的にはDC電極刺入部の大脳皮質第5層(錐体細胞)で核の凝集、細胞質の空砲化を組織障害とみなし組織障害度(障害を受けた細胞数/全細胞数×100 (%))を算出した。全ラットにおいて1時間でくも膜下出血前の膜電位に回復した。中にはcortical spreading depression のパターンを呈する例も存在した。脳波においてくも膜下出血作成後超急性期に脳波の平坦化、徐波化が確認された。脳波の減弱は数分持続し、最終的にくも膜下出血前の脳波に回復する例もあったが、回復しない例も存在した。脱分極時間と脳波抑制時間は有意な相関を示した。さらに脳波抑制時間と組織障害度においても有意な相関を認め、プロビット分析により組織障害度50%をきたす脳波抑制時間は54分であった。現在投稿に向け、原稿を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
データは揃っているものの、論文化に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
脱分極時間と脳波抑制時間及び脳波抑制時間と組織障害度の相関関係に関して論文化に向け準備を進めているが時間を要している。完成に向け邁進する所存である。本研究から脳波解析によりくも膜下出血症例の早期脳損傷に伴う重症度評価が可能であることが示唆された。脳波は実臨床においても使用しており、くも膜下出血における臨床応用を検討したい。さらに今後はくも膜下出血重症例に対する治療法の開発が課題となり、本実験系を用いて電気生理学的観点から治療法を模索したい。
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