研究実績の概要 |
軽症頭部単独外傷(GCS 14点~15点)患者の登録が、本年度は7例が追加され、合計で37名となった。抗凝固薬および抗血小板剤内服中の患者4名を除外し33名で検討した。搬入時あるいはフォロー時のCT・MRIにて頭蓋内出血や頭蓋骨骨折など何らかの器質的損傷を認める患者群を“病変あり群”(n=23)および認めない患者群を“病変なし群”(n=10)とした。評価項目は年齢、入院時GCSスコア、入院時血小板数、PT-INR、APTT、fibrinogen、D-dimerとし、一部症例においてはNSEならびにtissue factorを測定と高次脳機能の評価を行った。年齢 (72.5 vs 52.6歳)、入院時GCSスコア(14.6 vs 14.4点)、入院時血小板数 (21.3 vs. 19.2 ×104 /μl)、PT-INR (1.05 vs. 1.07)及びAPTT (30.1 vs. 31.1秒 ) において2群間で有意差を認めなかった。D-dimer (19.5 vs. 1.1 μg/ml, P<0.01)、fibrinogen (261.1 vs. 179.0 mg/dl, P=0.03) では“病変あり群”で有意に高値であった。また、NSEならびにtissue factorの値は、病院搬入時に有意に上昇していた。NSEとD-dimerの間にて有意な相関関係が認められた(r=0.727, p=0.026)。D-dimerとtissue factorの間においても有意な相関関係が認められた(r=0.803, p=0.009)。高次脳機能については、D-dimerとの相関は認められなかった。軽症単独頭部外傷の補助診断として血清D-dimerの値が有益である可能性があり、そのトリガーとして神経損傷によるtissue factorの放出が考えられた。
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