研究課題
頚動脈狭窄症患者10例に対する内膜剥離術後の頚動脈プラーク摘出サンプルを用いて、miRNAを含めたtotal RNAを抽出し、患者背景や放射線学的所見との関連を解析した。患者背景は、症候性が5例、進行性が3例、放射線照射後が2例であった。また放射線学的所見として、MPRAGE法にて胸鎖乳突筋比が2倍以上の不安定プラークが8例であった。動脈硬化病変で上昇することが報告されているmiRNA145の発現が有意差は認めないものの、症候性症例において上昇していた。摘出サンプルの中でもプラーク自体よりも内膜によりmiRNA145の発現が上昇していた。画像上のプラーク破綻とmiRNA145との相関は認めなかった。この結果より脳梗塞発症のリスクの高い症候性病変の特に内膜側にmiRNA145の上昇が見られることが明らかとなった。内皮細胞-平滑筋細胞-単核細胞の共培養モデルの解析を行うための全実験として、頚動脈狭窄におけるshare stress負荷を想定した、機械的血流負荷装置を用いて培養内皮細胞、平滑筋細胞に対するshare stress負荷時のmRNA発現変化を解析した。培養細胞に乱流負荷を行なったところ、内皮細胞においては、血管壁の炎症に関連することが報告されているMCP-1やNox4の発現上昇を認めた。また平滑筋細胞においてもNox4の発現上昇を認め、炎症系の分子が上昇していることが確認された。miRNAにおいてもこれらの炎症系に作用するものが上昇していることが予想された。