研究課題/領域番号 |
16K10728
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
松尾 宗明 佐賀大学, 医学部, 教授 (20219398)
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研究分担者 |
江良 択実 熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (00273706)
北川 裕之 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (40221915)
島野 健仁郎 東京都市大学, 工学部, 教授 (90287475)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | もやもや病 / 多能性幹細胞 / 血管内皮細胞 / 細胞外マトリックス / 血流剪断力 |
研究実績の概要 |
もやもや病患者剖検例の病理組織学的検討により、もやもや病では血管内皮細胞の細胞外マトリックスが正常と変化していることを見出した。このことから、もやもや病では血管内皮細胞の血流剪断力に対する脆弱性があり、狭窄病変は血管内皮細胞傷害に起因するのではないかとの病態仮説をたて、それを証明する目的でもやもや病患者由来の多能性幹細胞(iPS細胞)を用いて、血管内皮細胞の細胞外マトリックスを正常人と比較検討した。 その結果、もやもや病患者由来の血管内皮細胞では、正常に比しコンドロイチン硫酸の量が低下しており、硫酸化も低下していることが明らかになった。コンドロイチン硫酸の合成に係る酵素や硫酸化に係る酵素のRNA発現も低下していた。内皮細胞の細胞外マトリックスは、血流剪断力の刺激を感知して細胞内に伝え、NO産生などの反応を惹起するのに関与するといわれており、血流剪断ストレスに対する脆弱性の原因となっている可能性が考えられる。 また、もやもや病の病変ができる部位と血流剪断力の関係を明らかにする目的で、数値流体力学による血流剪断ストレスのシミュレーションを作成し、実際の症例での狭窄病変の継時的変化との比較検討を行った。その結果、もやもや病好発部位である内頚動脈終末部の壁面剪断応力値が最大値,平均値ともに総頚動脈終末部の3.5倍であることが示された。また、内頚動脈終末部でも特に前大脳動脈への分岐部直前と直後の部位の剪断応力が最も大きいことが分かった。また,内頚動脈終末部の流れでは,高速な流体が壁面のごく近くを通過するという特徴があり,これが壁面せん断応力の上昇の原因となっていることが分かった。実際の症例の継時的な狭窄進行部位も血流剪断応力の分布に近似していた。もやもや病の病変は、血流剪断応力の大きな部位に存在していることから、血流剪断応力による血管内皮障害が病変の形成に寄与している可能性が考えられた。
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