研究課題/領域番号 |
16K10729
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
日宇 健 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (00404260)
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研究分担者 |
堀江 信貴 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (70380912)
松尾 孝之 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (00274655)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | peri-infarct area / synapse |
研究実績の概要 |
脳実質内投与の確立:ヒト由来幹細胞をperi-infarct areaへの定位的脳実質内投与を行う。peri-infarct areaに計4箇所の投与を行った。梗塞1週間後にヒト神経幹細胞を患側大脳皮質に定位移植(1×105 cells/site, 3-4 sites)し, 1週毎に機能評価を行った。定位移植3週-4週間後に細胞移植群で機能回復を来した。 脳梗塞モデルでの幹細胞療法後のホストの梗塞部周囲peri-infarct areaにおける環境変化:細胞移植後はシナプスの増生、特に興奮性シナプスの増加が確認された。また同領域のPCRにてsynapseの増生に関与する分泌因子はTGF-β2, GluAが挙げられた。 In vitro: RatからのPrimary cortical neuronを用いてヒト神経幹細胞とのcoculture(non-contact)でsynapseの増生が確認された。 その他、細胞移植療法でドナーの年齢に着目し、脳梗塞後細胞移植の治療効果への影響とそのメカニズムについて検討を行った。加齢に伴いヒト骨髄間葉系幹細胞は液性因子の分泌が減少していた。それにより脳梗塞に対する骨髄間葉系幹細胞治療では治療効果に影響をきたしている可能性が示唆された。young 群では投与細胞からの BDNF や PDGF-BB の分泌量が多いことで、脳梗塞周囲層でのペリサイトに覆われた新生血管増加は脳血液関門の保全に関与し、ミクログリアの浸潤抑制に寄与していると考えられた。 脳梗塞に対する細胞移植療法においてドナーの年齢の影響は大きいと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している。ホストの梗塞部周囲peri-infarct areaにおける環境変化についての検討:細胞移植後はシナプスの増生、特に興奮性シナプスの増加が確認された。in vitroではsynapseの増生に関与する分泌因子はTGF-β2, GluAに絞られておりメカニズムの言及が可能である。 その他、細胞移植療法でドナーの年齢に着目し、脳梗塞後細胞移植の治療効果への影響とそのメカニズムについて検討を行い加齢に伴いヒト骨髄間葉系幹細胞は液性因子の分泌が減少していた。脳梗塞に対する細胞移植療法においてドナーの年齢の影響は大きいと考えられる。 以上のことが明らかとなり研究は概ね順調に経過している。
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今後の研究の推進方策 |
シナプス増生のメカニズムの解明 shRNAを用いてknockdown を行った幹細胞を移植し通常の幹細胞移植と比較してfunctional recoveryが抑制されるかを検討する。さらにシナプスの増生が抑制されていることが証明出来ればシナプス増生のメカニズムが同定される。 さらに発展的には樹状突起構築:Golgi-Cox染色を用いた樹状突起の可視化, 軸索伸長:順行性トレーサーであるBDAを対側皮質に注入したのちに脳を摘出し, 蛍光免疫染色で定量を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) in vitroではsynapseの増生に関与する分泌因子としてTGF-β2, GluAなどが挙げられた。細胞移植療法でドナーの年齢に着目し、加齢に伴いヒト骨髄間葉系幹細胞は液性因子の分泌が減少することがわかった。これらの結果が出たため実験動物購入額や麻酔用ガスの使用を減らすことができた。その費用を次の研究計画で使用させて頂きたい。 (使用計画) シナプス変化のメカニズム解明の実験に必要な実験動物ラット購入飼育、試薬(TTC, Cresylviolet)、麻酔用ガス(アイソフルレン、酸素、圧縮空気)、試薬 (一次抗体、二次抗体)などの購入に充てる。
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