研究課題/領域番号 |
16K10732
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
三上 毅 札幌医科大学, 医学部, 講師 (30372816)
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研究分担者 |
三國 信啓 札幌医科大学, 医学部, 教授 (60314217)
小松 克也 札幌医科大学, 医学部, 助教 (60749498) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ischemia / EEG / power spectrum / perivascular space |
研究実績の概要 |
慢性能虚血性疾患の血行再建術の際に、皮質脳波をモニターして血流増加による脳機能ネットワークを解析した。対象は、9例13半球のもやもや病で、開頭の際に脳表に電極を留置し、血行再建術を行った。比較対象としては未破裂能動脈瘤の手術の際に得られた脳表脳波からパワースペクトラムを解析した。ここで得られたプレリミナリーデータは、β帯域(13-30Hz)やγ帯域(30-80Hz)の変化である。すなわち、慢性脳虚血性状態にあるもやもや病では、コントロールと比較してβ帯域のパワースペクトラムが低く、血行再建術後のパワースペクトラムが上昇するという結果であった。脳虚血状態では、これまで低周波帯域の活動にしか注目されていなかった。高周波帯域の活動は、相対的パワーとしては小さくても機能的に重要であり、特にβ帯域のオシレーションは運動感覚の制御などと関連するとされ、この領域への可能性を示唆するデータである。現在、出血発症と虚血発症のもやもや病の電気生理学的な違いについても検討している。 また、上記の検討症例を含めたもやもや病症例においては、脳梗塞巣の有無とは別に血管周囲腔が拡大することがわかった。血管周囲腔の拡大は、脳症血管病性変化の1つとされ、主幹動脈病変との関連は指摘されていない。今回わわれわれが見出した知見は、もやもや病による主幹動脈狭窄閉塞性変化いより動脈拍動の低下が血管周囲腔の脳脊髄液灌流を遅延させ、血管周囲腔の拡大をひき起こすと考えた。虚血の病態において血管周囲腔周囲の慢性炎症性変化が慢性脳虚血の病態形成に関与していると推定した。この血管周囲腔拡大が及ぼす電気生理学的な影響をさらに検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の目標1及び目標2についてまとめており、論文投稿した。目標1は、慢性脳虚血性疾患(動脈硬化性病変やもやもや病)の脳血行再検術の際に測定した皮質脳波からパワースペクトラムと特徴的なオシレーションを解析し、非虚血性疾患(未破裂脳動脈瘤)と比較解析を行う。目標2は、慢性脳虚血性疾患における脳血行再建術後の皮質脳波のパワースペクトラムと特徴的なオシレーションの変化を解析する。
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今後の研究の推進方策 |
現在は目標3及び4について、基礎的実験を行うとともに臨床例では症例数を増やしして正常例と比較し、より詳細な解析を行っている。目標3については、脳梗塞モデルラットにおいて、β帯域やγ帯域の変化をとらえるモデルを作成した。現在、モデルを安定化させ、脳虚血の程度とβ帯域の変化をきたす要因との関連を観察できるようにしている。今後は、皮質刺激によるβ帯域やγ帯域の変化と、脳梗塞の縮小効果を解析することを考えると共に、前述した血管周囲腔拡大との関連も合わせてβ帯域の変化を観察していく。また、ラットについては通常のモデルでは、β帯域の変化や脳虚血の程度が予想よりも軽いため、SHRSPラットを使用していく予定である。詳細は以下のように予定している。 1. 両側総頚動脈閉塞モデルの作成:病理学的にヒトと類似した脳卒中を発生するSHRSPラットを使用する。4週のSHRSPラットにおいて、腹腔内注射による深麻酔を行い、両側総頚動脈閉塞モデルを作成する。これは脳梗塞を生じることなく慢性脳虚血をきたすモデルである。 2. 高次脳機能評価及び電気生理学的評価:高次脳機能評価は、プールを用いた行動試験を行う。プールを用いた行動評価機器はわれわれの施設で使用しており、新たな購入を必要としない。また、電気生理学的評価としては、Pinnacle Technology社の大脳皮質脳波測定システムで行う。使用するシステムは皮質脳波測定のため、低周波帯域のみならず、高次脳機能を反映するβ波やγ波などの高周波帯域のパワースペクトラム解析を行うことが可能であり、当施設ですでに導入済みである。解析方法は、これまでにわれわれが当施設行ってきた研究と同様の手法である。実験用ハードウェア等の設備は、昨年度に購入した。予想される結果は、髄液排出後に高次脳機能の改善と高周波帯域の脳波のパワー値の上昇である。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験を行うに際して、ラット用脳波測定器を一式そろえる必要があった。消耗品等ですでに購入が決定していたため、次年度使用顎が生じた。この測定機器により、今後は以下の測定を予定している。 第一にラットの慢性脳虚血状態における脳波の測定。また、髄液循環をmodificationすることにより、慢性脳虚血状態の脳波や脳活動性の変化の有無。次年度で購入予定のものは、実験用動物のみなので、順調に経過可能と考えている。
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