研究課題
脳虚血・再灌流後に投与されたメラトニンが、神経保護作用を及ぼすのはIL-4を介してミクログリアの極性を神経保護的なM2作用にシフトするという仮説を検証すべく実験を行った。まずはin vitroでプライマリーミクログリアの培養系を確立。培養ミクログリア細胞は、LPS+ IFN-γ、OGD処理を行い24時間でM1、M2 markerの発現量を免疫組織染色で定量した。またサイトカイン/ケモカインのELISArray kitを使用し、サイトカインやケモカインの発現量を検討。NO産生の評価も行い、虚血状態でのM1関連マーカーの上昇を確認した。これは既に報告されている内容の確認でもある。つづいて、M1が誘導するアポトーシスに対するメラトニン投与の効果を確認した。OGD処理後の神経培養にメラトニン処置を行うことで、ミクログリアの表現型はM2誘導された。そしてメラトニンがミクログリアをM2に誘導することにおいて、IL-4の関与を調べた。メラトニン受容体ノックアウトマウス(MT-1、MT-2)からのミクログリアの初代培養系において、同様のことが再現できるかを確認し、結果をえた。上記の内容は、脳神経外科学会の各種学会に参加し、発表する機会をえた。また学会参加することで多方面から情報を収取でき、有用であった。
2: おおむね順調に進展している
概ね当初の予定どおり、本年度はin vitroの実験系を確立し、ミクログリアの初代培養系での実験を行った。虚血系を確立するのに、やや手技・時間を要したが、その後は安定した培養細胞を確保できた。ELISArray kitも、初回は安定しなかったが手技の修正に伴い結果をえることができた。メラトニン受容体のノックアウトマウスも、同様の手技で培養を行い実験を行った。予定どおり実験が進んでいたと考える。2016年度末には、ベルリンで行われた国際脳循環代謝学会に参加し発表。共同研究者のPittsburgh大学のJun Chen教授らとdiscussionを行い、今後の方針、論文化にむけて討議を行った。
本年度はin vivoでのメラトニン投与の効果を確かめる実験を行っていく。マウス脳虚血モデルはすでに安定して作成することができるので、この虚血・再灌流モデルにおいて、メラトニンを投与。梗塞領域の比較・検討、Rotarod testやcorner testなどでの神経学的、運動感覚評価の行動解析を行う。また虚血後の脳組織を採取。ミクログリアのM2誘導がメラトニン投与においてどうであるかを免疫組織染色、RT-PCRで検討を予定している。また知見がまとめられたら、学会での発表を検討している。
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