研究課題
神経細胞に非致死的虚血負荷を与えることによって次に続く致死的な虚血負荷に対する耐性が誘導される虚血耐性現象(ischemic preconditioning)が知られている。近年では虚血負荷が加わった後のストレスが神経保護効果をもたらすというischemic postconditioning現象に関する報告が散見されるがその詳細なメカニズムに関しては未解明である。今回我々はミトコンドリア局在KATPチャンネルの活性化がミトコンドリアからのCa2+放出をもたらし、NMDA受容体反応を低減させることで虚血耐性を獲得するとする仮説をパッチクランプ法を用いて電気生理学的に示した。C57BL/6Jマウスを用いて海馬スライスを作成し、ホールセルレコーディングにてNMDA電流を計測、さらに細胞内カルシウム濃度変化およびミトコンドリア膜電位変化を計測した。今回の実験結果から、Ischemic PostCは、ミトコンドリアKATPチャンネルの開口が関与し、一時的にミトコンドリアを脱分極させることを示した。さらにischemic PostCの発動にはmPTPの少なくとも一時的な開口が必要であることを示し、それによりNMDA受容体をdown regulationさせることで細胞内のカルシウムイオン濃度の上昇を抑制することを示した。本研究は、ミトコンドリアが一過性のmPTP開口によるNMDAR silencingを介したミトコンドリアKATPチャネルの開口によって誘導されるPostCの神経保護効果に中心的な役割を果たすことが示された。
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PLoS One. 2019 Apr 12;14(4)
巻: Apr 12;14(4) ページ: epub
10.1371/journal.pone.0215104. eCollection 2019.