研究課題/領域番号 |
16K10741
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
茂呂 修啓 日本大学, 医学部, 助手 (00386012)
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研究分担者 |
四條 克倫 日本大学, 医学部, 助教 (90800433)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脳挫傷 / マイクログリア / P2受容体 |
研究実績の概要 |
ラット脳挫傷モデルを用いてP2X4受容体拮抗薬5-BDBDおよび、P2Y7受容体拮抗薬AZ11645373の効果を検討した。脳挫傷モデルにはcortical contusion injury modelを用いた。 まず抗Iba-1抗体、抗Galectin-3抗体を用いて組織学的に検討したところ、外傷により発現が上昇する活性型のマイクログリアは5-BDBDやAZ11645373の投与により発現が抑制された。次に抗Iba-1抗体を用いたwestern blottingを行いマイクログリアの発現を定量した。脳挫傷群ではNaive群と比較して有意なIba-1の発現上昇が認められた。5-BDBD、AZ11645373もしくはその両方を投与した群でのIba-1の発現は外傷単独群に比較して有意に低下した。しかし抗GFAP抗体を用いたwestern blottingを行うと、5-BDBDやAZ11645373を投与した群では外傷単独群に比較し、むしろGFAPの発現は有意に上昇していた。次にPCRを用いて各種炎症性サイトカインの発現を、挫傷組織周辺の大脳皮質、挫傷から遠位の頭蓋底近くの大脳皮質および外傷側海馬組織にわけて観察した。外傷によりIL-1 beta、IL-6およびTNF alphaの発現は上昇したが、5-BDBDやAZ11645373を投与した群では外傷の近位、遠位にかかわらず多くの部位で発現が有意に抑制された。特に外傷遠位の大脳皮質におけるIL-6の発現は5-BDBDとAZ11645373による相乗効果が認められた。 外傷後にP2X4受容体やP2X7受容体を拮抗するとマイクログリアの活性化が抑制され、抗炎症効果が得られると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度までに予定した研究計画を終了した。本研究ではNaive群の他に外傷群として外傷単独群、外傷後に5-BDBDを投与した群、外傷後にAZ11645373を投与した群、外傷後に5-BDBDとAZ11645373の両方を投与した群を作製した。このすべての群において抗Iba-1抗体と抗Galectin-3抗体を用いた免疫染色を完了した。また挫傷周囲大脳皮質、外傷から遠位の大脳皮質、外傷側海馬におけるGalectin-3の定量をWestern blottingを用いて行い、これも全群で完了した。各部位における炎症性サイトカインの発現をPCR法を用いて観察した。IL-1 beta、IL-6、NF kappaB、TNF alphaのPCRを全群とも終了した。マイクログリアの遊走能の検討のためにCXCL-10のPCRを行い、これも全群で完了した。Western blottingやPCRの結果はSPSSソフトを用いて統計学的検討を行っており、すべての群と部位においてデータの解析を終了した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は当初予定した通り、P2X4受容体拮抗薬5-BDBDおよび、P2Y7受容体拮抗薬AZ11645373の投与が脳挫傷後の予後を改善するかを検討するために研究をすすめていく予定である。具体的には外傷後から1か月間、経時的な行動試験を行う。モデル作製前にラットのハンドリングを1週間行い、ラットを人の手に慣れさせておく。その後脳挫傷モデルをこれまでの研究と同様に作製する。まず神経反射の回復を定期的に観察する。次に空間認知能の評価として十字迷路試験を行う。さらに運動機能の評価としてシリンダー試験、グリッド歩行試験、コーナーテスト、パスタ試験を行う。これらの試験は当施設で通常行われている試験であり、大きな問題なく施行可能と考えている。外傷単独群と外傷後に5-BDBDとAZ11645373の両方を投与した群を各群10頭ずつ作製し、評価を行う予定である。行動試験の結果はSPSSソフトを用いて統計学的な解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初Western blottingにはsemi-dry法を用いる必要があると考えていた。それはこれまでわたくしがWestern blottingを行ってきた別の施設での経験上semi-dry法の方が転写効率が高いと考えていたためである。しかし今回の研究で我々がすでに機器を有しているdry法(i-Blotドライブロッティング式)でも十分な転写が行われることが確認できた。転写の確認にはゲルのCBB染色およびメンブレンのシプロルビー染色を行った。そのためsemi-dry法に用いるはずだった備品代を使用せずに済んだ。実際dry法を用いたところ、目的タンパクのバンドも単一のきれいなバンドを得ることができた。助成金は今後、行動試験に用いる予定である。
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