研究課題/領域番号 |
16K10743
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
廣津 千恵子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 研究技術員 (90647174)
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研究分担者 |
有光 なぎさ 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (40408688)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 再生医療 / 細胞移植 / 神経再生 |
研究実績の概要 |
神経再生の難しい神経組織損傷に対して、細胞移植により補う再生医療が期待されている。これまでに片マヒ、脊髄損傷、認知症モデルマウスに対してヒトiPS細胞由来神経細胞移植を検討しており、今回は大脳皮質損傷による運動機能障害モデルマウスに対して幹細胞由来神経細胞移植実験を行う上で、移植する部位及び細胞形態の検討、回復に関与する因子の探索を行った。運動野を凍結損傷させて1週間後の片マヒモデルマウスの損傷部位直下の線条体部に、あらかじめ培養、分化誘導しておいたヒトiPS由来神経前駆細胞を移植した。また、新しい治療アプローチとしての移植細胞形態、移植場所の検討として高次構造を供給できる神経細胞シートを作製し、移植効果の比較を行った。運動機能の評価系として、Rota-rod法、Beam walking試験を行った結果、移植1週後から4週後にかけてコントロール群 (PBS投与)に対して、移植群は体重荷歩行の有意な回復が見られた。また、移植後の時間経過における細胞状態を調べるため、移植後経時的に解剖し、作製したマウス脳の凍結切片に対して免疫組織学的解析を行ったところ、移植部位とは異なる損傷皮質部位にヒトiPS由来神経細胞が運動神経に分化し定着している事が確認された。このことは、移植部位の線条体領域から損傷部位へ移動することを示唆している。さらに損傷領域に発現する有効因子SDF1,リーリンを同定し、リーリン受容体下流に位置する細胞内蛋白Dab1が移植細胞周辺に発現し、リン酸化によるDab1活性化が損傷脳移植細胞によって増加することを見いだした。現在、Reelinシグナル系路が遮断されたDab1 変異マウス(Yotari)の細胞を用いて移植実験を行い、移植細胞による回復への関与にReelinシグナル系路が与える影響について検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
移植実験及び因子の同定が予定通り進んだため。
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今後の研究の推進方策 |
神経細胞移植による神経障害の回復についての解析は、その分子メカニズムを解析することが,将来的な治療応用に役立つ。現在、見出したリーリン、SDF1の下流に複数存在するシグナルの再生に関わる経路の制御様式について解析を進める。さらに、神経細胞分化過程、成体マウス脳スライスもしくは神経細胞初代培養系を用い、着目遺伝子の発現制御(発現もしくは発現抑制ベクターの構築及び過剰発現、抑制体の作製、リーリン発現増加させる薬剤オランザピンや、減少させるハロペリドール、DNAメチル化阻害剤の継続的投与、リーリン発現量を調整した移植による影響)を行い、その機能を判定する。具体的評価法として関連遺伝子変異マウスから作製したニューロスフィアを用いた移植による移動神経細胞の移動時の形態変化がどのように変わるか(たとえば、先導突起を伸ばして細胞体の移動が見られるのか、軸索中のゴルジ体の形成と移行による極性変化が見られるのか、シナプス前部、後部機能タンパクの神経活動依存的集積が見られるのか)、マウス個体への伝達物質阻害、促進薬剤投与により、その回復効果が変化するか、について解析する。細胞レベルではRNA干渉法により発現制御した細胞、もしくは遺伝子改変マウスから作成した神経細胞もしくは脳組織のスライス培養により、遊走する細胞の平均移動速度と割合を測定し、各因子による影響を数値化して評価する。 次に移植された場において、移植後の微少環境変化が神経回路再生に関わる過程について調べる。ターゲットとなる因子の遺伝子を欠損したマウスもしくはウィルスベクターにより局所的に発現抑制したマウスに移植した場合の回復経過について解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予想していた実験が予想より早く結果が得られたため次の解析を行う予定であったが、それには額(残額550円)が不十分であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
抗体、活性化試薬など高額試薬を購入し解析に使用する予定
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