研究課題
変異型isocitrate dehydrogenase 1/2(IDH1/2)が検出されるgliomaの予後は、野生型IDH1/2の予後よりも格段に良く、gliomaの予後診断マーカーとして有用である。本研究において、変異型IDH1/2の免疫抗原等の作製およびglioma症例におけるIDH1/2の遺伝子型のスクリーニングを行った後、すべての変異型IDH1/2に対する特異的抗体を樹立し、gliomaの臨床診断に応用することを目標としている。さらに、すでに樹立した変異型IDHに対する特異的抗体とそのエピトープとを共結晶化し、抗体による変異型IDHの認識メカニズムを解明することを目的としている。平成28年度までに、これまで作製した変異型IDH1/2に対する抗体の中で、MsMab-2を用いた免疫組織染色を実施した。その結果、MsMab-2はIDH1-R132Lの変異型の切片に対し、特異的に反応性を示した。これまで、IDH1-R132Hに対するHMab-1、HMab-2、IDH1-R132Sに対するSMab-1、複数の変異型に対するMsMab-1が免疫組織染色に有用であることがわかっていたが、これらの組み合わせにより、より正確にIDHの変異型を免疫組織染色で見分けることが可能になった。また、以前樹立したクローンMsMab-1のFab断片と、そのエピトープであるIDH1-R132SおよびIDH2-R172Sのペプチドとの共結晶化に成功した。X線構造解析を行った結果、MsMab-1によるIDH1-R132SおよびIDH2-R172Sの認識メカニズムが明らかとなった。一方、IDH1-R132Cに対する抗体は、未だに世界で報告が一切ない。他の変異型に比べ、システインが含まれることから、抗原作製や抗体作製が非常に困難である。平成29年度には、IDH1-R132Cの抗原を調整し、抗体作製の準備が終了した。
2: おおむね順調に進展している
これまで、変異型IDHに対するモノクローナル抗体を複数作製し、IHCで有用であることを示してきた。今年は、最も難度の高いIDH1-R132Cの抗原を調整し、抗体作製の準備が終了した。順調に研究が進捗していると評価できる。
IDH1-R132Cに対する抗体は、未だに世界で報告が一切ない。他の変異型に比べ、システインが含まれることから、抗原作製や抗体作製が非常に困難である。来年度には、今年度調整したIDH1-R132Cの抗原をマウスに免疫し、特異的抗体の作製に取り掛かる予定である。
予定通りIDHに対する抗体作製が進んでいる状況であるが、今年度生じた少しの残額を、来年度計画において消耗品として使用予定である。最終年度の来年度は、最も難度が高いIDH1-R132Cに対する特異的抗体を樹立する予定である。
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Brain Tumor Pathol.
巻: 34 ページ: 91-97
10.1007/s10014-017-0281-0