研究課題/領域番号 |
16K10750
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
岩立 康男 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (70272309)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | グリオーマ / ICG / 光線力学療法 / 化学療法 |
研究実績の概要 |
代表的脳腫瘍であるグリオーマは、重要な機能を担う脳に浸潤性に発育し、また放射線・化学療法に抵抗性であることから、極めて治癒を得ることが難しい難治性腫瘍である。その最悪性型である膠芽腫の治癒を得るためには、新規の強力な化学療法が必要である。我々は、近赤外蛍光色素であるindocianine green (ICG) 結合型リポソームを開発し、その静脈内投与で脳腫瘍組織への高度かつ長期間の集積すること、近赤外線照射によって一重項酸素による細胞死と強力な特異的抗腫瘍免疫を誘導することを証明してきた。今回の研究では、この新規ナノ粒子に抗がん剤を封入し、局所に高濃度に分布させること、およびそれによる抗腫瘍免疫誘導によって治療効果の向上を目指している。本年度は、膠芽腫に対する標準治療薬であるテモゾロマイドを用いて、治療効果の増強が得られるか否かを、7テスラ動物専用MRIを用いて検証した。9L-グリオサルコーマ細胞を移植したラット(n=5)の腫瘍サイズと生存期間は通常のICG結合型リポソームを用いた光線力学療法の結果と差を認めなかった。一方で、摘出標本の病理学的検索では、広範な壊死が観察され、同時にCD8 T細胞の浸潤増強が認められた。マイクログリア/マクロファージの浸潤は有意な変化を認めなかった。未治療コントロール群においては旺盛な腫瘍増殖が確認され、壊死像は全く認めていない。以上より、抗がん剤を封入したICG結合型リポソームは強力な細胞死を誘導し、特異的抗腫瘍免疫を発動させることが確認されたが、これを有意な治療効果として得るには、投与のタイミング、光照射の回数なども検討が必要と思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
摘出標本において、CD8 T細胞の浸潤増強が認められたが、皮下腫瘍に比べると低レベルにとどまるため、脳腫瘍局所における抗原提示を増強することが、腫瘍特異的Tリンパ球を効果的に集積させる有効な方法である可能性が高いと考られる。本年度は、Standard 51Cr release assay による腫瘍特異的細胞障害性T リンパ球誘導の定量に注力したが、良好な結果を得るに至らなかった。現在はLDH assayを中心に行い、成果が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は引き続き、LDH assayによる腫瘍特異的細胞障害性T リンパ球誘導の定量を行うとともに、抗がん剤封入ICG結合型リポソームの治療効果を当初の予定通り、パクリタキセルとイリノテカンについて検討する。また、局所の強力な細胞死とともにサイトカインの高濃度分布が有効な可能性があり、サイトカインを封入したICG結合型リポソームも作成し、治療実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度は、検討した抗がん剤の種類が1種類であったため、使用予算額が予定を下回った。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、昨年度に施行できなかった抗がん剤の検討を追加で行う予定である。今年度の研究計画については予定通り施行する。
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