我々は、ICG結合型リポソームを設計開発し、これが脳腫瘍に特異的に集積し、近赤外線照射によって発熱作用と活性酸素を産生することを示してきた。本研究では、この分子に抗がん剤を封入してナノキャリアとして用いる治療実験を行った。ICG-リポソームと近赤外線照射を併用した治療群では有意な増殖遅延を認め、この治療効果には、HSP70発現が関与していた。CD8 T細胞の浸潤を強く認め、免疫不全ラットでは治療効果が消失した。一方で、テモゾロマイド封入による増殖遅延効果の増強は確認できなかった。脳腫瘍に対する治療効果は、腫瘍細胞死をいかに有効な獲得免疫誘導に結び付けられるかが鍵となると考えられた。
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