難治性の悪性グリオーマをターゲットに、今まで我々は、脳内を自由に遊走し腫瘍に集積する神経幹細胞や間葉系幹細胞をベクターとする自殺遺伝子治療を開発し、その有用性と安全性を検証してきた。いずれにおいても、大量かつ安全なベクター細胞の調達が課題となっていた。近年、採取が容易で、自己細胞からの精製も可能な脂肪細胞からの間葉系幹細胞への分化研究が進んできており、この細胞をベクターとして用いる研究を行うことを考えた。
平成30年度は、今までに行ったin vitroでの治療効果の検証を続けつつ、in vivoでの効果判定を継続して行った。ラットC6脳腫瘍モデルを作成し、作成1日後に脂肪由来間葉系幹細胞(Adipose-Derivered Mesenchymal Stem Cell; AD-MSC)にtk遺伝子を導入した細胞(ADMSCtk)を様々な比率で注入し、GCV投与を行う治療研究を行った。投与するADMSCtkの比率が大きい程、抗腫瘍効果が得られ、C6:ADMSCtkの比率が16:1まで抗腫瘍効果が得られた。 今後は、ADMSCtkの安定的な細胞供給が必要であり、培養過程での細胞死を防ぐ手法や、より効率的な遺伝子導入を行う手法の究明が課題である。
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