研究課題/領域番号 |
16K10755
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤本 康倫 大阪大学, 医学系研究科, 招へい准教授 (80589789)
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研究分担者 |
阿知波 孝宗 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (00771908)
福永 貴典 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (30745005)
香川 尚己 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (50444542)
福屋 章悟 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (50726502)
有田 英之 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (60570570)
永野 大輔 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (70726520)
木嶋 教行 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教 (80534627)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ALCAM / CD166 / CD6 / グリオーマ / 膠芽腫 / 髄芽腫 / 免疫療法 |
研究実績の概要 |
悪性グリオーマ幹細胞に強発現しており、膠芽腫において幹細胞性と浸潤性に関与している細胞表面抗原ALCAM (Activated leukocyte cell adhesion molecule) とそのリガンドであるCD6の細胞免疫反応について検討を行っている。 ヒト及びマウスのグリオーマ細胞株でのALCAMの発現について解析し、CD6-ALCAM結合による免疫反応の評価のため実験系の確立を目指している。異種反応が生じない同種マウスでの実験系が理想であるが、ALCAM陽性グリオーマ細胞株が存在せず、実験に難渋している。 悪性グリオーマの手術摘出標本におけるCD6陽性T細胞の存在頻度と局在の免疫組織染色による検討については、CD6の免疫染色に難渋したが、いくつかの抗体とpositive controlで検討を行い、良好な染色条件を確立した。CD6の免疫染色により、ALCAMの発現頻度が高いGradeIVの膠芽腫標本の腫瘍内浸潤リンパ球に、一定の割合でCD6陽性T細胞が存在することが明らかになった。CD6陽性T細胞の存在意義については、臨床経過や他の免疫応答細胞との関係性を含め、更なる検討が必要である。 悪性グリオーマにおけるALCAMの発現の意義について、更に見知を広げるため、小児悪性グリオーマである髄芽腫でもALCAMの発現について解析を行った。症例により腫瘍細胞のALCAM発現に差異が見られ、近年コンセンサスとなった分子学的分類との関係性があることが明らかになった。髄芽腫におけるALCAM発現について、髄芽腫細胞株を用いたin vitro, in vivoでのALCAMの機能解析も実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CD6-ALCAM結合による免疫反応の評価のため、CD6陽性T細胞とALCAM陽性悪性グリオーマ細胞と共培養を行う予定であったが、ヒト腫瘍細胞株を用いた実験系では HLAが相同するリンパ球の確保が困難であった。 マウスでのグリオーマ自然発生モデルの作成により、マウスCD6陽性T細胞とマウスALCAM陽性グリオーマ細胞株の反応性の検討を予定していたが、グリオーマ 自然作成モデルの作成が技術的に困難であり、代わりにC57BL/6マウスより樹立されたマウスグリオーマ細胞株GL261での検討を行うこととした。しかし、GL261 のALCAMの発現をflowcytometryで検討したが、発現は認めなかった。ALCAMの強制発現によりCD6-ALCAM結合による免疫反応の評価に用いることができるか検討中である。 CD6の免疫染色では、抗体を数種類検討したことや良好なpositive controlを同定するに難渋し時間を要した。結果、Anti-CD6/T12抗体 [EPR4057] (Abcam)を使用し、positive controlをNormal Human Tonsil (US Biomax)を用いることで良好な染色条件を確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
CD6-ALCAM結合による免疫反応の評価のため、同種でのALCAM陽性腫瘍細胞株とCD6陽性T細胞を使用した実験系が可能かどうか、引き続き検討を行っていく。 悪性グリオーマの手術摘出標本に対しての検討は今後、さらに症例数を増やし、ALCAMの発現とCD6陽性T細胞の存在頻度と局在、臨床経過や他の免疫応答細胞の関係性を含めて検討していく。 小児悪性グリオーマである髄芽腫で、ALCAM発現が分子学的分類との相関性があることが示されたため、こちらについても更に検討していく。髄芽腫の腫瘍細胞の増殖性・浸潤性についてALCAM発現がどのように関与するのかを、髄芽腫細胞株(DaoyやONS-76など)を用いて、ALCAMのRNAiによりin vitro, in vivoで機能解析実験を引き続き行なっていく。またALCAM発現の変化が、他の遺伝子発現にどのような変化をもたらすのかを検討するために、RNA sequenceによる解析も実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画が予定よりも遅れ、一部実施困難な実験が存在するため、購入予定であった試薬や動物について、購入を行わなかったことによる。これらは次年度に持ち越し、平成31年度に継続実施予定の研究のために使用する。
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