研究課題
我々は、脳関門を通過できる抗うつ剤を中心に、アクチン重合を指標とした阻害剤をスクリーニングし、グリオーマの浸潤を劇的に抑制するSSRIに属するフルボキサミンを同定した。本結果を、まとめScientific Reports誌に発表した。さらに、フルボキサミンのがん細胞への抗浸潤効果を他の部位で発生するがん細胞にも有効であるのかを調べた。ヒト非小細胞肺がん細胞株であるH1299は、血清刺激により激しくラッフル膜を形成する。フルボキサミンは、血清刺激によるラッフル膜形成を濃度依存的に強く阻害した。同様の阻害は、創傷治癒アッセイを用いた細胞遊走実験においても認められた。フルボキサミンは、ダイナミンGTPase活性を阻害することより、幅広いがん細胞に対して抗遊走・浸潤薬となる可能性が示唆された。さらに、フルボキサミンの薬効を詳細に調べるために、側鎖の異なった誘導体を12種、in vitroアクチン線維形成評価法を用いて調べた。予備的な結果であるが、側鎖の違いにより、アクチン線維形成の程度に差が見られたため、さらに詳細に解析する予定である。
2: おおむね順調に進展している
既に同定したフルボキサミンに関連した結果は、論文として報告することができた。また、フルボキサミンは、グリオーマ細胞だけでなく、広い範囲で抗浸潤剤として働く可能性を示す結果を得た。今後、血液脳関門を通過する抗うつ剤、抗てんかん薬など、in vitroアクチン線維形成評価法を用いて、順次スクリーニングしていく。
今後、血液脳関門を通過する抗うつ剤、抗てんかん薬など、in vitroアクチン線維形成評価法を用いて、順次スクリーニングしていく。また、細胞のアクチン動態をライブで観察するための実験系を構築しつつある。この系を用いて、フルボキサミン、その他のスクリーニングされた薬剤のアクチンに対する効果が詳細にわかるものと思われる。
今年度分の経費は、効率よく執行できたが、今後購入予定の消耗品が、残予算では購入できないので、繰り越して次年度予算と合せて購入する事とした。
消耗品購入予定。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 23372
10.1038/srep23372
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