研究課題
これまでに、ドラッグリポジショニングによりグリオーマ細胞の遊走浸潤を抑制するSSRI(フルボキサミン)を同定した。フルボキサミンは、ダイナミンGTPaseに阻害作用を示す。また、細胞内では、アクチンの再構成を強く抑制する。しかしながら、ダイナミンがどのようにアクチン再構成を調節しているのかについて、その詳細は不明であった。我々は、フルボキサミンに加えて抗グリオーマ剤をさらにスクリーニングすると共に、このアクチン制御機構を解析した。ダイナミンーコルタクチン複合体は、アクチン線維を束化し安定化させる。本年度、サイクリン依存性キナーゼ5(CDK5)がコルタクチンを直接リン酸化することで、ダイナミンーコルタクチン複合体形成だけでなく、複合体によるアクチン線維束形成を阻害し、その結果、アクチン線維は不安定化しアクチンの脱重合が促進することを明らかにした。CDK5によるコルタクチンのリン酸化は、細胞遊走、浸潤に必要な仮足形成を阻害することをラットグリオーマ由来細胞株(NG108-15)を用いて明らかにした。これらの結果から、CDK5が新規の抗グリオーマの分子標的となりうることを報告した(Abe et al., Int J Oncol, 2019)。今後、抗グリオーマ作用を持つダイナミン阻害剤のスクリーニングと共にCDK5の阻害剤のスクリーニング系の開発も順次進める予定である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件)
International journal of oncology
巻: 54 ページ: 550-558
10.3892/ijo.2018.4663
Journal of Clinical Investigation
巻: 130 ページ: 2145-2162
10.1172/JCI79990