研究課題/領域番号 |
16K10760
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
矢野 茂敏 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (60332871)
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研究分担者 |
秀 拓一郎 熊本大学, 医学部附属病院, 診療講師 (40421820)
篠島 直樹 熊本大学, 医学部附属病院, 寄附講座教員 (50648269)
魏 范研 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 講師 (90555773)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 下垂体腺腫 / 難治性 / cdkal1 / チオメチル化修飾 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、インスリン分泌調節に重要な役割をしていることが明らかになっているタンパク質であるcdkal1の下垂体腺腫細胞における機能を明らかにし、そのタンパクあるいは遺伝子の働きをコントロールすることで難治性下垂体腺腫の病態を解明し、あたらしい治療法を開発することである。 cdkal1はリジントランスファーRNAのmRNAとの結合部位をチオメチル化することで結合を安定させ、リジンの翻訳を確実に行わせるタンパク質である。したがってこの機能が低下すると不安定なタンパク質が量産され、細胞にストレスを与えることが予想される。今回我々は、下垂体ホルモンを過剰産生している機能性下垂体腺腫における役割を明らかにしようとしている。そのためにまず下垂体腺腫細胞におけるcdkal1の発現状況を調査し、腫瘍細胞の種類によりその発現、あるいは活性が異なるかを調べることから始めた。 本年度は手術摘出標本におけるcdkal1のリジンt-RNAに対するチオメチル修飾率(活性)を測定し、非機能性下垂体腺腫、GH産生性下垂体腺腫、ACTH産生性下垂体腺腫、PRL産生性下垂体腺腫の4種類の腫瘍間で比較した。非機能性下垂体腺腫において活性が高く、逆に機能性腺腫は低いという結果が得られた。さらに各種腫瘍にけるcdKal1 mRNAの発現量も測定し比較したところ、活性と同様に非機能性腺腫において発現が低かった。これらの結果から、ホルモンを過剰産生している細胞タンパクの翻訳活性が通常よりも低下している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた腫瘍標本におけるcdkal1のmRNAと翻訳活性の測定が順調に行われ、少なくとも下垂体腺腫細胞においてcdkal1が存在し、何らかの役割を担っていることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、下垂体腺腫におけるcdkal1の役割をさらに追及するために培養細胞を用いた実験を行う予定である。まずcdkal1の発現、翻訳活性を測定し、存在を確認できたら、cdkal1をノックダウンすることによりホルモン産生能力がどう変わるかを調査していく予定である。 またホルモン過剰産生状態にある細胞には何らかの小胞体ストレスがかかっていることが予想されるため、cdlkal1と小胞体ストレスの関連について調べていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は臨床サンプルの解析で終了したので、培養細胞を用いた分子生物学的実験を次年度に先送りした。このため次年度は分子生物学的試薬や測定機器の準備に費用が必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
培養細胞(GH3)を用いて、cdkal1のノックアウトをsiRNAを用いて行う。効果は細胞内のmRNA測定と培養液中のGH濃度を測定して検出する。GH3に対してGH産生を促す試薬、あるいは抑制する試薬を用いて、cdkal1の効果を評価する。
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