研究課題/領域番号 |
16K10762
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
黒田 順一郎 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (90536731)
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研究分担者 |
中村 英夫 久留米大学, 医学部, 講師 (30359963)
篠島 直樹 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (50648269)
牧野 敬史 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (90381011)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 悪性神経膠腫 / BRAFv600e変異 / BRAF阻害薬 |
研究実績の概要 |
RAS-MAPキナーゼ経路の活性化は多くの腫瘍で報告されている。活性化を起こす分子機構の一つにBRAF遺伝子変異があるが、BRAFの600番目のアミノ酸がバリンからグルタミン酸に変化する変異(V600E)に対する分子阻害薬ベムラフェニブvemurafenibはメラノーマに対して臨床応用され、約80%という高い奏功率を示す。翻って、近年、悪性グリオーマにおいてもBRAF V600E変異が報告されている。まだ、症例の蓄積は少ないがこの変異を有する悪性グリオーマには摘出術、放射線治療、テモダール投与からなる標準治療を施行しても髄液播種や他臓器への転移を来し予後不良な症例があり、新規の治療法が望まれる。本研究の目的は当施設で樹立したBRAFV600E変異膠芽腫細胞株を用いた前臨床試験でベムラフェニブの薬効・薬理を明らかにし将来の臨床展開を目指すものである。実験に使用する細胞としてはBRAF V600E変異を有する神経膠芽腫からの細胞株の樹立に成功した。2019年度は、これに加えた臨床検体からの新規細胞株樹立の樹立を行う。なお、In vivo実験では細胞株の同所移植モデルおよび他臓器転移モデルの確立には至っていない。In vitro実験ではBRAF阻害剤の細胞増殖抑制効果、添加時の浸潤能・浸潤能の変化についてアッセイ系を用いて調べる予定である。遺伝子発現の変化はBRAF阻害剤に対する耐性の獲得を念頭に調べる。Invivo実験ではテモゾロミド投与群を対照としてベムラフェニブを移植モデルに投与し、生存期間を指標に薬効を評価する。また、治療に伴う腫瘍組織変化についても評価し薬効の機作について考察する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実験に使用する細胞としてはBRAF V600E変異を有する神経膠芽腫からの細胞株の樹立に成功した。しかし、これに加えた臨床検体からの新規細胞株樹立の樹立には至っていないためである。
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今後の研究の推進方策 |
In vitro実験系:2019年度は樹立細胞株を用いて腫瘍の転移、播種に重要である腫瘍細胞間接着因子、腫瘍細胞浸潤・遊走因子、血管透過因子を主なターゲットとしてマイクロアレイを行なう。これにより今後実験に使用していく細胞の遺伝子発現プロファイルを明らかにしておく。樹立した細胞株を用いてIC50を指標にBRAF阻害剤とテモゾロミド 、ACNUなど中枢神経悪性腫瘍に使用される薬剤の増殖抑制効果を比較検討する。また、BRAF阻害剤と他薬剤の併用による相加・相乗効果の有無についても調べる。BRAF阻害剤添加群に関しては薬剤耐性獲得を念頭にRAS-MAPK系を中心に遺伝子発現の変化をウエスタンブロッティング、RTPCR、DNAマイクロアレイで調べる。 In vivo実験系:臨床検体から樹立した細胞株を免疫不全マウスの脳に定位的脳手術の手法を用いて移植する。他臓器転移モデルに関しては細胞株を尾静脈から静注したモデルの使用を考慮する。マウス同所移植モデルおよび他臓器転移モデルにBRAF阻害剤、テモゾロミドを投与し治療実験を行う。生存期間を指標として治療効果を判定する。また、治療に伴う変化を摘出腫瘍を用いて病理学および分子生物学的に行う。BRAF阻害剤の治療効果増強を目指したMEK阻害剤併用やbevacizumab併用実験についても考慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗の遅れから次年度使用額が発生した。次年度以降でIn vitro実験ではBRAF阻害剤の細胞増殖抑制効果、阻害剤添加時の浸潤能・浸潤能の変化についてアッセイを行う。遺伝子発現の変化はベムラフェニブに対する耐性の獲得を念頭に調べる。In vivo実験ではテモゾロミド投与群を対照としてBRAF阻害剤を移植モデルに投与し、生存期間を指標に薬効を評価する。また、治療に伴う腫瘍組織変化についても評価し薬効の機作について考察する。
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