研究課題/領域番号 |
16K10763
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
竹島 秀雄 宮崎大学, 医学部, 教授 (70244134)
|
研究分担者 |
横上 聖貴 宮崎大学, 医学部, 准教授 (40284856)
山下 真治 宮崎大学, 医学部, 助教 (40468046)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | microvascular / proliferation / KIAA-BRAF fusion gene / pilocytic astrocytoma / laser microdissection / LA-PCR / mesenchymal traisition |
研究実績の概要 |
従来、脳腫瘍内の新生血管を形成する機序として、腫瘍の産生する様々な増殖因子に反応した正常血管内皮細胞が腫瘍内にリクルートされ増殖・分化することによるものと考えられてきた。 しかし、近年癌幹細胞の発見から、腫瘍細胞により腫瘍血管が形成される可能性が報告されており、我々の研究室では、膠芽腫の新生血管(microvascular proliferation, MVP)を形成する細胞内に免疫組織染色においてp53の遺伝子変異を示唆する陽性所見が見られることに着目して、MVPのみをLaser microdissectionで切り出して、そこに腫瘍細胞と同じ遺伝子変異が存在することをDNAシークエンス解析で証明し報告した(Kawasoe et al., J Neurosurg 2015)。 今回のプロジェクトでは、WHO grade Iの良性脳腫瘍に分類されるものの、形態的に膠芽腫と類似したMVPが観察される毛様細胞性星細胞腫において、同様に腫瘍細胞からのmesenchymal transitionが関与しているか否かを解析することにある。方法としては、基本的に前回使用したLaser microdissectionを用いて解析するが、血管内皮における腫瘍細胞のマーカーとして、毛様細胞性星細胞腫で70%の頻度で報告されているKIAA-BRAFの融合遺伝子を用いた。 まず、当教室に保管してある腫瘍サンプル6例分からcDNAを合成し、RT-PCRにより50%の症例でKIAA-BRAF融合遺伝子を検出した。 次に、KIAA-BRAF融合遺伝子を検出した3例で、LA-PCR解析を行い、イントロンを含んだ長い融合遺伝子を増幅し、DNAシークエンス解析で融合遺伝子のbreak pointを確定した。 それぞれのbreak pointに隣接した検出用のprimerを作成し、パラフィンに包埋した腫瘍組織からLaser microdissectionによりMVPを採取し、PCRにより腫瘍MVPのDNAからfusion geneを示すバンドを検出した。これは、毛様細胞性星細胞腫においても膠芽腫と同様にMVPの形成に腫瘍細胞のmesenchymal transitionが関与していることを示唆するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)毛様細胞性星細胞腫では、KIAA-BRAFの融合遺伝子が70%の症例で報告されており、腫瘍細胞のマーカーとして使用可能と思われる。ただし、シークエンス解析するためには染色体DNAでの検出が必要となる。まず、当教室に保管してある腫瘍サンプル6例分からcDNAを合成し、RT-PCRにより50%の症例でKIAA-BRAF融合遺伝子を検出した。 2)KIAA-BRAF融合遺伝子を検出した3例で染色体DNAを抽出し、LA-PCR解析を行い、イントロンを含んだ長い融合遺伝子そのものを増幅し、DNAシークエンス解析で個別の症例の融合遺伝子のbreak pointを各々決定した。 3)それぞれのbreak pointに隣接した検出用のprimerを作成した。 4)これを用いて、パラフィンに包埋した腫瘍組織からLaser microdissectionによりMVPを採取し、PCRにより腫瘍MVPの染色体DNAからfusion geneを示すバンドのい増幅を検出した。このことは、毛様細胞性星細胞腫においても膠芽腫と同様にMVPの形成に腫瘍細胞のmesenchymal transitionが関与していることを示唆するものである。 以上の如く、定性的には毛様性星細胞腫のMVPの形成に腫瘍細胞が関与している可能性が示されたが、問題はコンタミネーションの可能性を如何に排除するかである。今後、digital PCR等の定量的な方法を用いて、腫瘍細胞由来の内皮細胞の割合を検証する必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
さらに、微量の検出を行うためdigital PCRにて腫瘍組織本体とのfusion geneを含む割合を確定し、どの程度の割合でmesenchymal transition由来の腫瘍細胞が存在するかを決定する。 また、この事象の信頼性をあげるため、形態学的にfusion geneを血管内皮に証明することができないか、in situ hybridization等の方法を準備している段階である。
|