研究課題/領域番号 |
16K10765
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
立石 健祐 横浜市立大学, 医学部, 助教 (00512055)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | IDH1 mutation / Glioma / NAD+ metabolism / Therapeutic target / DNA repair pathway |
研究実績の概要 |
脳原発性悪性腫瘍の多数を占める神経膠腫において、IDH1遺伝子変異が腫瘍発生初期段階に高頻度に生じること が明らかになっている。申請者らは患者由来神経膠腫幹細胞を使用し、このIDH1遺伝子変異がもたらすNAD+の代 謝性変化を見出し、この所見を利用したIDH1遺伝子変異に対する有力な治療法を開発してきた (Tateishi K et al. Cancer Cell, 2015)が、本年度のは実際の臨床応用を視野に置き、本治療法の更なる成績向上を目標に掲げ、具体的には神経膠腫に対し従来から用いられているテモゾロミド(TMZ)との併用療法効 果をin vitro、in vivoレベルで検討し、NAD+枯渇を促進させることで腫瘍制御の相乗効果を達成するための研究を遂行した。また新たな患者由来神経膠腫幹細胞の樹立を試み2例の内因性IDH1変異神経膠腫の樹立に成功した。現在遺伝子背景について詳細に検討している。また新規治療法開発のための検討を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
IDH1変異gliomaに対する標準的化学療法剤temozolomide (TMZ)が一過性にPARP活性を高め、その結果細胞内NAD+を一過性に減少させることが判明した。この現象を応用する形でNAMPT阻害剤とTMZを併用することにより、IDH1変異グリオーマに対する細胞内NAD+枯渇を促進させ、代謝障害による細胞死を誘導されることを見出した。この現象はIDH1変異の有無により影響が生じることからIDH1変異特異的治療法であることを明らかにした(Tateishi K et al. Cancer Res. 2017). また2つの新たなIDH1変異glioma細胞株の樹立に成功した。本モデルを用いてIDH1変異腫瘍の悪性化の要因、及び治療標的としての遺伝子変異を明らかにすべく検討を進めている (Tateishi K et al. under preparation).
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今後の研究の推進方策 |
新たに樹立した細胞株等を用いてDNA修復機構への影響についても検討を進める。現在IDH1阻害剤を細胞株に対し長期的に投与しており、阻害剤治療後の細胞株に於けるアポトーシスへの影響を生化学的手法を用いて検討する準備をしている。このメカニズムを解明することで新たな治療ターゲットを見出すことを今後の主たる研究テーマと位置づけている。
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