• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

神経膠腫における免疫逃避機序と遺伝子変異・予後との関係の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K10776
研究機関国立研究開発法人国立がん研究センター

研究代表者

大野 誠  国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (70598648)

研究分担者 北野 滋久  国立研究開発法人国立がん研究センター, 早期・探索臨床研究センター, 医員 (60402682)
吉田 朗彦  国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (80574780)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード悪性神経膠腫 / 免疫逃避 / PD-L1 / PD-1 / チェックポイント分子 / IDH
研究実績の概要

悪性神経膠腫は最も頻度の高い悪性脳腫瘍であり、特に膠芽腫は現在の標準治療である放射線治療併用テモゾロミド療法を行っても生存期間中央値は1.5-2年と極めて予後不良な疾患である。悪性神経膠腫においてPD-L1 (programmed cell death ligand -1)の発現等を介した免疫逃避機序が存在し、現在の抗癌剤に対する治療抵抗性の原因となっている可能性が考えられる。
本研究では悪性神経膠腫組織中に発現するチェックポイント分子の発現、浸潤リンパ球、患者血液中の免疫担当細胞を解析し、悪性神経膠腫の遺伝子異常や治療効果・予後との関係を明らかにし、治療効果を予測する因子の同定や新たな治療開発を目指している。
初年度は悪性神経膠腫における免疫逃避機序の探索を目的として、悪性神経膠腫100例の組織マイクロアレイを用いて、PD-L1、CD4, CD8, 制御性T細胞(regulatory T cell: Treg)のマーカーであるFOXP3、抑制マクロファージのマーカーであるCD68およびCD204の免疫組織化学的検討を行った。
その結果、悪性神経膠腫100例中、PD-L1陽性21例(21%)、CD4陽性62例(62%)、CD8陽性63例(63%)、FOXP3陽性34例(34%)、CD68陽性93例(93%)、CD204強陽性33例(33%)であった。PD-L1発現はCD4陽性、CD8陽性、FOXP3陽性、CD204陽性と有意に相関し、膠芽腫67例においてPD-L1陽性例は陰性例より有意に生存期間が延長していた。これらの結果からはPD-L1発現は内在性の免疫応答に対応した腫瘍の抵抗機序の表れと考えられ、チェックポイント阻害剤を用いることによりPD-L1発現例に対しては抗腫瘍免疫が賦活化され治療効果が得られる可能性が考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

悪性神経膠腫の組織マイクロアレイを用いたPD-L1発現と免疫担当細胞の浸潤の検討により、腫瘍局所における免疫反応と PD-L1 発現の関連が示唆される結果が得られた。
一方で、非小細胞肺癌を対象とした 4つの抗 PD-L1 抗体 (22C3, 28-8, P142, P263)を比較した報告 (Hirsch et al. 2017) がなされたことから今回用いた抗PD-L1抗体:E1L3Nの再評価が必要と判断し、今後の研究に用いる抗PD-L1抗体の選定と陽性判断基準を設定する必要があるためやや遅れていると判断している。

今後の研究の推進方策

抗PD-L1抗体として我々は当院で過去にvalidationされ論文化に用いられた抗PD-L1抗体: E1L3Nを用いて上記の実験を行ったが、肺癌領域では抗PD-L1抗体は、22C3, 28-8, SP142, SP263が治療薬に応じて用いられることから、他癌腫との比較可能性を考慮して我々の用いたE1L3Nよりも、上記の4抗体 (22C3, 28-8, SP142, SP263)を用いた研究を行う方がよいと考えた。従って今回我々の用いた同じ組織マイクロアレイを用いて、3種類の抗PD-L1抗体(22C3, 28-8, SP142)での免疫染色を行い、E1L3Nとの染色性の比較を行った。その結果、
それぞれの抗体により染色性の違いがあるものの病理学的にはPD-L1陽性・陰性の判定には大きく影響しないものと考えられた。今後は4種類の抗体による染色性を定量化し悪性神経膠腫における適切な抗 PD-L1 抗体を選定し陽性判定基準を確立することを予定している。
さらに均一な治療を行った膠芽腫におけるPD-L1発現と免疫担当細胞の浸潤を検討し、予後との関係を検討すること、グレードIIおよびIII神経膠腫におけるIDH1/2遺伝子変異有無と免疫逃避機序との関係を検討することを予定している。

次年度使用額が生じた理由

組織マイクロアレイを用いた免疫組織化学的検討を主に行ったことにより抗体の消費量が想定していたよりも少なかったため。

次年度使用額の使用計画

今後はwhole sectionを用いた免疫組織化学的検討を行うため抗体の消費量が増加すると考えている。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016

すべて 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [学会発表] 悪性神経膠腫におけるProgrammed cell death ligand 1 (PD-L1)発現と腫瘍浸潤リンパ球サブタイプの関連2017

    • 著者名/発表者名
      大野 誠、里見 介史、北野 滋久、宮北 康二、高橋雅道、三木俊一郎、松下 裕子、市村 幸一、成田 善孝
    • 学会等名
      第15回日本臨床腫瘍学会学術集会
    • 発表場所
      神戸コンベンションセンター(兵庫県・神戸市)
    • 年月日
      2017-07-27 – 2017-07-29
  • [学会発表] 悪性神経膠腫におけるPD-L1の発現とリンパ球浸潤の検討2017

    • 著者名/発表者名
      大野 誠、里見 介史、北野 滋久、吉田 朗彦、宮北 康二、高橋雅道、三木俊一郎、松下 裕子、市村 幸一、成田 善孝
    • 学会等名
      第35回日本脳腫瘍病理学会学術集会
    • 発表場所
      栃木県総合文化センター(栃木県・宇都宮市)
    • 年月日
      2017-05-19 – 2017-05-20
  • [図書] 脳腫瘍学 基礎研究と臨床研究の進歩2016

    • 著者名/発表者名
      大野 誠
    • 総ページ数
      780 (689-694)
    • 出版者
      日本臨床社

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi