研究課題/領域番号 |
16K10777
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
高橋 雅道 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (10436454)
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研究分担者 |
平岡 圭 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (10719587)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 膠芽腫 / 遺伝子治療 / 放射線治療 / ウイルスベクター |
研究実績の概要 |
膠芽腫は極めて予後不良で放射線抵抗性の悪性脳腫瘍である。本研究では、抗真菌薬である 5-FC を細胞内で抗腫瘍薬の5-FU に変換するプロドラックシステ ムと自己増殖型レトロウイルス(Retroviral Replicating Vector: RRV)による遺伝子発現システムを用いた遺伝子治療と放射線治療の併用効果を膠芽腫幹細胞を 使って検証し臨床利用へ応用する事を目的としている。 平成28年度、平成29年度においては、本研究の遂行のための基盤となる実験環境の整備を進め、RRVを当施設で使用するべく、Material Transfer Agreementを締結してマテリアルを輸入した。また、本研究所内での倫理審査を経て実験遂行可能な環境を整備する事が出来。その一方、免疫不全動物(マウス)へのヒト由来膠芽腫幹細胞の頭蓋内移植予備実験を行う環境を整備することが出来、複数の脳腫瘍幹細胞を用いたモデルを作成した。しかし平成29年に国立がん研究センター研究所の新研究棟の完成を受けて研究室自体が引越しを行ったため、一時期研究を中断せざるを得なかった。また、新しい環境下での実験体制を整えた。具体的には脳腫瘍幹細胞の放射線感受性とRRV感染性スクリーニングを行うべく、放射線実験施設の利用手続きを進め、完了した。現在ヒト由来膠芽腫細胞幹細胞の放射線感受性実験を行っている。また、並行して動物実験の環境整備を進め、既に樹立されたヒト由来膠芽腫幹細胞の頭蓋内移植予備実験を進めた一方で、マウス脳腫瘍モデルに対する放射線照射実験の実施環境を整備するべく関係各所と相談しながら遺伝子組み換え動物への放射線照射を行う環境を整備した。平成31年度はマウス脳腫瘍モデルを用いてプロドラッグシステム併用放射線治療実験を行って研究を完遂する計画としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究計画1年目に当たる平成28年度においては、本研究の遂行のための基盤となる実験環境の整備を進めた。具体的には、米国で開発されたレトロウイルス ベクター(RRV: retroviral replicating vector)を当施設で使用するべく、Material Transfer Agreementを締結してRRVを輸入した。この輸入完了に約9か月 を要した。また、遺伝子組み換え生物などの使用に関わる諸規制に照らし合わせて倫理審査を経て、本研究を遂行するための環境を整備することができた。その 一方で、29年度または30年度に遂行する予定としていた免疫不全動物へのヒト由来膠芽腫幹細胞の移植予備実験を行う環境を整備することができ、前倒しで脳腫 瘍移植実験を行う事が出来た。これにより、少なくとも3種類の脳腫瘍幹細胞を用いた脳腫瘍モデルを樹立できた。 平成29年度には国立がん研究センター研究所の新棟建設完了に伴い当研究所のすべての部門が引っ越した。この大きな引っ越しに伴って動物実験施設も一新され、新しい環境下での実験体制を整えた。具体的には平成28年度に開始予定だった脳腫瘍幹細胞の放射線感受性とRRV感染性スクリーニングを行うべく、放射線実験施設の利用手続きを進めた。また、並行して動物実験環境整備を進めヒト由来膠芽腫幹細胞の頭蓋内移植実験を進めた一方で、以前の実験施設では可能であった遺伝子組み換え生物に対する放射線照射が施設の刷新によって許可されなくなってしまったため、引き続き担当部署を調整を進めている。上記の引越しによって一時的に研究活動が行えない時期が発生したため、主に動物実験については一度全ての実験を中断したうえで機材などを全て新しく購入する必要が生じ、実験計画の見直しと遅延を余儀なくされ、1年間の実験期間延長を申請し、ご許可をいただいたところである。
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今後の研究の推進方策 |
現在の問題は、以前の実験施設では可能であった遺伝子組み換え生物に対する放射線照射が現在の新研究棟では不可能であることである。本研究の最終的な目標は、プロドラッグシステムとRRVによる遺伝子発現システムを用いた遺伝子治療と放射線治療の併用効果を膠芽腫幹細胞を使って検証し臨床利用へ応用する事であるため、遺伝子製剤を投与されたマウス脳腫瘍モデルに対する放射線照射実験による効果検証が必要であるが、現状の研究組織体制では実現不可能な可能性が高い。従って、引き続き国立がん研究センター内の関係各所との協議を進めていくとともに、今年度は実験計画を一部変更して効果検証することも並行して計画している。動物実験施設からの許可がどうしても出なかった場合には、国内外の共同研究施設など既に上記動物に対して放射線照射が許可されている他施設での研究遂行も考慮するが、その場合には大幅に研究期間の延長が必要になることが予想されるため、引き続き国立がん研究センター研究所内の動物実験施設でも研究が遂行できる許可をいただけるよう、協議を進めていくこととする。その一方で、in vitroの研究環境はほぼ整い、患者由来膠芽腫細胞株のRRV感染性スクリーニングなど既に終了した計画もあるため、引き続きin vitroでの実験(患者由来膠芽腫細胞株の放射線感受性、膠芽腫細胞の遺伝子発現プロファイル確認)を継続して進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究所の引っ越しに伴って主に動物実験の進捗が滞り、研究費の使用量が想定より少なく済んだため。 (使用計画)前年度から繰り越された経費と今年度の経費を有効利用して、今年度は前述した通り新研究所で予定していた研究計画を遂行していく予定である。
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