研究課題
本研究では神経膠腫として認識される腫瘍の発生並びに進展の過程でどのような分子生物学的因子が影響を及ぼすのかをMRIなどの神経放射線画像情報を利用して統合的に解析し、そこから得られた知見をもとにして、神経放射線画像による神経膠腫の新しい分子診断技術を開発することである。本年度は主に1)神経膠腫の生物学的特徴を規定する因子(遺伝子変異、miRNAの発現量プロファイル)の網羅的解析ならびに2)画像/生物学的特徴を規定する因子のクラスタリング解析を行った。凍結検体抽出DNA/RNAを用いて、神経膠腫におけるdriverとなる遺伝子を中心にパネルを作成、target sequencingおよびdeep sequencingによる変異アレル頻度の測定をおこない、遺伝子プロファイルの差を明らかにした。また、DNAのメチル化状態 (Illumina Human Methylation450 BeadChip(450k) arrayで評価) も膠芽腫に対して施行した。これらの生物学的特性と画像特性を連結する解析も施行できた。各症例の遺伝子発現(やmiRNA発現)プロファイルと画像特徴プロファイルを統合的にクラスター分析し、これら二つのモダリティの関係性を明らかにできた。解析にはR言語で提供される、Lasso regressionを利用し、データの属性により、two-class-unpaired もしくは continuous-response types解析をおこなった。これらのデータを用いて、ある遺伝子変異に着目した場合に、変異の有無による脳腫瘍の脳内局在の特徴やMR画像の性状の違いを統計学的に解析することができた。
2: おおむね順調に進展している
研究は極めて順調に進行していると判断している。当初の計画どおりに実行されており、画像による遺伝子変異予測精度も計画以上の予備的結果を得ている。
本研究の最終段階として、腫瘍生物学的情報と神経放射線画像情報の双方が強く影響し合う因子を用いて、腫瘍生物学的情報による神経放射線画像情報の重回帰分析あるいは、その逆解析を行い、画像特徴から腫瘍の腫瘍生物学的を推定するアルゴリズムの開発を行う。この解析を行うにあたり、200例を超える試料を解析する予定であるが、そのうちの半分程度を探索コホートに、残り半分程度を検証コホートに利用する。この解析を経ることで、分子生物学的情報と神経放射線学的データを統合解析する新規病態解析手法(Radiogenomics)を用いて、神経膠腫の病態の本質に迫るという目的が達成される。この研究手法は従来では解析困難と考えられていた、遺伝学的データ(genomics)とMRIなどの医用画像(radiology)を統合的にリンクして網羅的に解析するもので、医用画像を用いた先端的な研究手法である。本研究手法を追求することで、腫瘍の分子生物学的情報と神経放射線学的情報の相関関係が網羅的に明らかにされ、その知見をもとにして、現状では腫瘍を摘出するという侵襲的な手段を経てしか明らかにできない腫瘍の分子生物学的情報が神経放射線学という非侵襲的手段で取得できるようになる。
(理由)遺伝子発現(やmiRNA発現)プロファイルと画像特徴プロファイルを統合的にクラスター分析し、これら二つのモダリティの関係性を解析するにあたり、当初予定していた一部コンピュータソフトアルゴリズムの購入を行わずにソフトウェア開発を進めたために繰越金が発生した。(使用計画)研究は順調に進行しており、もともと予定していたRadiogenomics解析ソフトウェアはほぼ完成を迎えている。発生した繰越金によって、Radiogenomics解析ソフトウェアの高速化を図ることができる予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
World Neurosurgery
巻: 113 ページ: 208~211
10.1016/j.wneu.2018.02.117
World Neurosurg.
巻: 107 ページ: 1045.e5~1045.e8
10.1016/j.wneu.2017.07.152
American Journal of Neuroradiology
巻: in press ページ: in press
10.3174/ajnr.A5368.
Interv Neuroradiol
巻: 23 ページ: 527~530
10.1177/1591019917710810
J Neurosurg
10.3171/2017.3.JNS17169.
J Stroke Cerebrovasc Dis
巻: 26 ページ: 1521~1527
10.1016/j.jstrokecerebrovasdis.2017.02.038
Oncol Lett
巻: 13 ページ: 2085~2088
10.3892/ol.2017.5677