研究課題
本研究の目的は、数値流体力学的解析を脳動脈瘤に応用することで、血管内手術後の脳動脈瘤の再発の予測因子を探索することである。本研究では金沢大学脳神経外科で血管内手術を行った脳動脈瘤のうち、数値流体力学的解析が可能な内頚動脈瘤を解析した。当初の目標が100例であったところ平成28年度は50例以上の症例で解析が可能であった。これらの数値流体解析から得られたデータと、動脈瘤因子(部位、最大径、ネック径)、コイルに関するデータ(コイル体積塞栓率、コイル形状と硬さ)、再発のデータ(再発の時期、部位、程度)を調べて再発の関連因子を統計学的に解析した。その結果、血管内手術によってコイルで塞栓された部位の圧力が高まることが危険因子であることを明らかにできた。術前の治療戦略や手術適応決定において、本所見は重要な役割を果たす可能性がある。本研究結果は国内学会で発表し、今後国際学会で発表するとともに英語論文を作成中である。しかしこの知見から治療前に再発を予測して治療に応用するためにはさらに精度を高める必要がある。従来の数値流体力学的解析の欠点は全ての患者に対して同じ条件で行うため、本来異なる個人差に基づいて解析していない点にある。平成29年度からは解析を患者個人の条件で行うことにより、解析を個別化することで精度が高まると考える。本研究によって個別化した数値流体力学的解析によって脳動脈瘤再発の因子を明らかにし、より精度の高い治療前の再発予想を実現化する予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定では100例程度の解析を予定していたが、50例以上の解析を終了しており、おおむね順調に進展していると考えられる。
現在予定通りに計画が進んでいるため、引き続き症例の登録を進めるとともに、そこから得られる結果の解析を進めていく方針である。
年間ライセンス契約の流体計算ソフトウェアで運用したところ、購入予定であった流体計算ソフトウェアを購入せずに解析が可能であったため、その分の購入費用が生じなかった。そのため基金分に次年度使用額が生じた。
成果発表関連の資金が予定よりも高額になっていることなどから、それらに次年度以降に充填して運用する方針である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (4件)
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