本研究の目的は、数値流体力学的解析結果を脳動脈瘤に応用することで、血管内手術後の脳動脈瘤の再発の予測因子を探索することである。本研究では金沢大学脳神経外科で血管内手術を行った脳動脈瘤のうち、数値流体力学的解析が可能な脳動脈瘤を解析した。当初の目標であった100例には達しなかったが70例以上の症例で解析が可能であった。これらの数値流体解析から得られたデータと、動脈瘤因子(部位、最大径、ネック径)、コイルに関するデータ(コイル体積塞栓率、コイル形状と硬さ)、再発のデータ(再発の時期、部位、程度)を調べて再発の関連因子を統計学的に解析した。その結果、血管内手術によってコイルで塞栓された部位の圧力が高まることが危険因子であることを明らかにして英語論文として発表した。術前の治療戦略や手術適応決定において、本所見は重要な役割を果たすと考えられ、これらの知見を治療前に再発を予測して治療に応用するためにはさらに精度を高める必要があると考えられた。本解析は従来の数値流体力学的解析と同様に全ての患者に対して同じ条件で行っており、本来異なる個人差に基づいて解析していない点に問題があると考えられた。しかしこの問題は解析による結果を無次元化することによって解決でき、動脈瘤の再発因子である圧力差は感度100%、特異度93%と高い数値を示した。以上より当初必要と考えられた解析の個別化は不要であるとの結論に至った。本研究によって数値流体力学的解析によって脳動脈瘤再発の因子を明らかとなり、より精度の高い治療前の再発予想が可能となった。本研究結果は数々の国内学会で発表し、3つの国際学会で発表した。
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