本研究は、脳深部刺激療法をより効果的な治療法に改良することを目指し、その目的ために、疾患特異的に出現する異常脳波(病的発振現象)をバイオマーカーとして用い、刺激装置を病態にあわせて制御するためのアルゴリズムを構築、そして、副作用を避け効果的な脳刺激を実現するために光遺伝学技術(Optogenetics)を用いて、次世代の“光遺伝学的閉回路式脳深部刺激療法システム”を開発することを目的とした。 脳深部刺激療法は、脳神経疾患により制限されている人間の身体機能を回復・補完するための確立された治療法であり、本研究で飛躍的な改善を行うことで、脳神経疾患により苦しんでいる患者の生活の質を改善、また社会の経済的負担を軽減することに貢献することを目指している。 最終年度(2018年度)は、本研究の主題である主に閉ループ脳深部刺激システムの開発に着手した。病的発振記録を確実に記録して、病的発振発生源の座標を探す装置の作成を目指し、パーキンソン病モデルマウスからの神経活動記録を行なった。マウスの脳はごく小さく、ターゲットから神経活動を記録し、病的発振発生源を同定することは非常に困難であったが、手技を確立した。また、刺激方法として、病的発振現象をキャンセルする逆位相の刺激を試みた。これらの試みは、病的発振周波数に特異的な症状を軽減させるのに有用な可能性があり、これらの結果は病的発振現象の基礎科学的な性質を理解するのに役立つと考えられたが、こちらは現在のところ特異的な結果は得られなかった。 得られた知識の集約として、Optogenetic closed-loop DBSへの応用として 以上の結果を用いて、病的発振解析から得られた情報を元に適切なアルゴリズムで病的発振発生源を光刺激するOcl-DBSシステムを作成している。本研究期間中には実験動物の体外で実際に作動するものの完成を目標としていたが、現在も進行中である。
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