研究課題
昨年度の検討結果から、FFAR1は脳内モノアミン遊離を調節することで、うつなどの情動行動に関与することが示唆された。そこで本年度は、① 依存性薬物コカインによる移所運動活性亢進効果や ② 遷延する疼痛に伴ううつ様行動に、FFAR1は機能的に関与しうるか否かを検討した。① コカイン誘発移所運動活性亢進効果におけるFFAR1の機能的役割コカインを野生型マウス(雄性C57BL/6J)に単回急性投与(20 mg/kg、i.p.)すると、移所運動活性を急速に亢進させるが、FFAR1遺伝子欠損マウスにおいては、この効果は有意に減弱していた。また、in vivoマイクロダイアリシス法を用い、マウス線条体部位におけるモノアミン遊離に対する検討結果から、FFAR1はセロトニン遊離を促進させることで、コカイン誘発移所活性亢進効果に関与することが示唆された。② FFAR1は慢性疼痛に伴ううつ病に関与するか?疼痛モデルとして遷延性炎症性疼痛モデル (Freundの完全アジュバント投与モデル:CFAモデル) と末梢神経障害性疼痛モデル (L4/5 spinal neve ligationモデル: SNLモデル) を使用し、これらの疼痛モデルをFFAR1遺伝子欠損マウスに適応して機械的疼痛様行動やうつ様行動(尾懸垂試験)を検討するした。その結果、両疼痛モデルにおける疼痛様行動をFFAR1欠損マウスの方が強く呈し、また尾懸垂試験における不動時間延長の程度も大きかった。さらに、三環系抗うつ薬アミトリプチリン(10 mg/kg, i.p.)は、CFAモデルには有効であったが、SNLモデルには無効であった。上記in vivoマイクロダイアリシス法を用いた実験結果から、FFAR1は脳内セロトニン遊離を調節することで、疼痛閾値や気分などの情動行動制御に関与する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
上位中枢におけるFFAR1の機能に関しては未だ不明な点が多い中、疼痛などのストレス刺激に伴う情動行動変化に、脳内セロトニン・ドパミン遊離調節を行うFFAR1の機能的重要性が明らかになりつつある。本研究結果は、FFAR1が新規抗うつ薬開発の良い標的となる可能性を示している。また、FFAR1欠損マウスにおいては、コカイン投与による移所運動活性応答が有意に減弱していたことから、依存性薬物による行動変化にもFFAR1は関与している可能性が示唆された (本検討に関しては、本年度末に論文投稿を行った)。
コカイン誘発移所運動活性亢進効果以外の行動変化(条件付け場所嗜好性試験など)について検討を重ねることでコカイン依存との関係性をより詳細に検討する。モルヒネなど他の依存性薬物に対する行動変化との関係について検討を行う。疼痛に伴う情動行動変化を検出するため、尾懸垂試験以外の行動試験(オープンフィールドテスト、高架式十字迷路試験など)を取り入れるとともに、他の抗うつ薬、抗不安薬などの効果を検討する。
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