研究実績の概要 |
てんかん焦点切除術においてもっとも症例数の多いのは側頭葉てんかんであるが,中でも海馬硬化・萎縮がなく外側皮質病変がある,あるいはMRI病変のない側頭葉てんかんの焦点切除術において,慢性頭蓋内脳波記録が不可能な場合に海馬切除の必要性を判断することは難しい.本研究ではセボフルラン(Sev)麻酔下のHFOが海馬切除判断のバイオマーカーになり得るかの検討をおこなった.対象:慢性頭蓋内脳波記録を行いMRIで海馬硬化・萎縮がない側頭葉てんかん9例(平均30.7±13.2歳).慢性頭蓋内脳波記録および切除手術時の開頭前にSev濃度0.5MAC,1.5MACそれぞれ10分間術中脳波測定を行った.慢性頭蓋内脳波記録で海馬傍回から発作時脳波パターンが出現した群(4例)と,出現なし群(5例)で1)徐波睡眠期2)0.5MAC 3)1.5MAC下で,海馬傍回のripple(80-250Hz), fast ripple(250-500Hz)の出現頻度を比較.結果:海馬傍回から発作時脳波パターンが出現した群で,0.5MAC下fast rippleが,発作時脳波パターンが出現しなかった群と比較して有意に高かった.また,発作時脳波パターンが出現しなかった群において,0.5から1.5MACに濃度上昇時のfast ripple増加率が有意に高かった.また,発作時脳波パターンが出現しなかった群において,1.5MAC下fast rippleが,徐波睡眠期fast rippleと比較して有意に増加.考察:てんかん原性が低いと考えられる群で,Sev濃度上昇によってfast rippleが増加したという結果は逆説的であるが,すでに低濃度Sevによってfast rippleが増加しておりそれ以上増加できない状態なのかもしれない.術中HFOは海馬切除のバイオマーカーになり得ると考える.
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