研究課題/領域番号 |
16K10803
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
坂田 清彦 久留米大学, 医学部, 講師 (90368936)
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研究分担者 |
折戸 公彦 久留米大学, 医学部, 助教 (50597408)
森岡 基浩 久留米大学, 医学部, 教授 (20295140)
小牧 哲 久留米大学, 医学部, 助教 (20597413)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 圧電素子 / 眼球運動 / 電気刺激 / 術中モニタリング / 固定方法 |
研究実績の概要 |
ビーグル犬を用いた動物実験の結果、以下のような事実が明確となった:眼窩上に設置したピエゾデバイスでも、イヌの上直筋に針電極を刺して得られるEMG同等の反応が得られるが、動眼神経への機械的刺激だけでは眼球運動を惹起することは難しく、低電圧(0.4mA)のモノポーラによる電気刺激が必要であった。 以上の知見を元に、倫理委員会申請の下、眼球運動神経を巻き込んだり、圧排している頭蓋底腫瘍の症例に対し、臨床使用を重ねていった。対象となる疾患は主に海綿静脈洞浸潤を伴う下垂体腺腫、錐体斜台部および斜台部腫瘍、巨大小脳橋角部腫瘍、脳幹背側部腫瘍、眼窩内腫瘍である。 また臨床データおよびボランティアを用いた追加実験では以下のことが明らかになった:一側の眼において、内眼角と外眼角の両外側にデバイスを固定した場合、動眼神経刺激でも外転神経刺激においても内眼角より外眼角に設置した方が眼球運動を検知しやすいことが明らかとなった。また側臥位や腹臥位などの体位では、重力の影響のためか眼窩表面からピエゾデバイスが浮いてしまうことで研究当初は検出がやや困難であったが、デバイスを底地がやや硬めであるマジックテープ(Velcro)で眼窩上より固定することで、検出率がアップし、体位に関係なく良好な記録ができるようになった。 これまでに40症例以上の頭蓋底腫瘍手術症例で術中眼球運動モニタリングを行うことができ、テクニックというよりノウハウにより、検出率が向上し、最近ではほとんどの症例で十分な反応を得ている。ただし滑車神経に関しては現在のところ検出は困難である。 また平成29年度はブダペストで開催されたEuropean Congress of Clinical Neurophysiologyの学会で口演発表し、その成果を報告することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年間で約40症例の臨床例に使用することができた。ただし初期の頃は十分な電気刺激をもってしても検出できなかった症例が多かった。前述したようにデバイスの固定方法を替えることで、術中体位に依らない良好な反応の検出が可能となった。 ピエゾセンサーで検出される眼球運動誘発電位を(ocular motor nerves activating piezzo-electoric potential:OMNAPP)と名付け、これまでの実験経過を論文として作成し、現在投稿中(Under review)である。
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今後の研究の推進方策 |
更に臨床症例を重ねて、有効性を示していきたいと考えている。 最近では、神経が露出さえすればほぼ確実に検出することが可能となったため、今後は術中操作による神経機能の悪化を推測する定量的な評価も可能かもしれないと考えており、そのためには術中に時々刺激を繰り返し、電位を記録していく必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会での発表、論文校正などに関連した支出が多くなることが予想されます。また臨床症例でもデバイスの追加購入の必要性が予想されています。これらを考慮して使用していきたいと考えています。
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