研究実績の概要 |
頭蓋縫合早期癒合症は、主に頭蓋骨と顔面骨の縫合が早期に癒合する症候群性、頭蓋骨のみが早期に癒合する非症候群性に分類される。症候群性のApert、Crouzon、Pfeiffer症候群では、手術後の再狭窄例が多いため、本疾患の遺伝子確定診断は経過・予後の判定に重要である。 研究の目的は、1) 頭蓋縫合早期癒合症の系統的遺伝子検索および臨床データ集積、2) 病態の手がかりを得るために、患者由来間葉系細胞(歯髄細胞)を用いた骨分化のメカニズムを解明することにある。 今年度は、1) 頭蓋縫合早期癒合症の系統的遺伝子検索において、Apert症候群1例、Crouzon症候群2例、Pfeiffer症候群3例(Type1:2例, Type2:1例)にFGFR2遺伝子変異が認められた。Pfeiffer症候群Type1の2例はスプライスサイトの変異をもち、変異部位およびその前後のエクソンをエクソントラップベクターに挿入した。変異型、野生型の遺伝子の一部が導入されたエクソントラップベクターをHEK293細胞にトランスフェクションし、mRNAを解析した。2例においてスプライシング異常を確認した。2) 骨分化メカニズム解明では、本研究疾患のモデル細胞としてApert症候群(FGFR2変異)、頭蓋縫合骨化遅延を呈する鎖骨頭蓋骨異形成症(RUNX2変異)、コントロール細胞を用いた。表面マーカーCD105, CD90陽性、CD45陰性を確認した。各細胞について骨芽細胞、骨細胞分化誘導を行い、アルカリフォスファターゼ(ALP)、アリザリンレッド(ALZ)染色、骨分化各段階での遺伝子発現を定量的PCR法で調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) 頭蓋縫合早期癒合症の系統的遺伝子検索 1st, 2nd line:hot spot サンガー法(FGFR2, FGFR3, FGFR1, TWIST1, TCF12, EFNB1, IL11RA)、3rd line:次世代シークエンス(当センターメディカルゲノムセンター)の流れで、Apert, Crouzon, Pfeiffer, Muenke, Saethre-Chotzen症候群等のゲノム解析が可能である。今年度は、イントロン変異について、エクソントラップベクターを用いたmRNAの解析を行い、2症例についてスプライシング異常を確認した。
2) 骨分化メカニズム解析 モデル細胞を用いた骨芽細胞、骨細胞分化誘導条件が決まり、アルカリフォスファターゼ(ALP)、アリザリンレッド(ALZ)染色、骨分化各段階での遺伝子発現を定量的PCR法で解析した。
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