研究課題
採血により得られた成長因子を組織再生に利用する新治療法:多血小板血漿療法を末梢神経損傷治療に応用することを目指し、研究計画を立案した。本提案では、末梢神経損傷に対するPRP治療の臨床応用を目指し、(1)非臨床proof of conceptの取得、(2)動物モデルを使用した作用メカニズムの解明と至適投与条件検 討、(3)臨床研究(安全性試験)を行うことを目的とした。(1)では家兎遊離神経移植モデルを用い、移植時単回投与による効果を非投与群と比較して検証した。 組織学的評価および電気生理学的評価においてPRP投与群では神経再生が非投与群よりよかった。(2)では(1)と同様のモデルで、再生神経の免疫染色を行って、 シュワン細胞の増殖を比較した。PRP投与群では非投与群よりシュワン細胞の増殖率が高く、PRPはシュワン細胞に作用して神経再生を促進しているメカニズムを明らかにした。 (1)(2)の結果により、臨床研究のプロトコールを作成し、遊離神経移植時単回投与安全性試験を計画した。第3種再生医療等製品として特定再生医療委員会の審査を受け、厚生労働省の承認を得た後に、臨床研究を開始した。まず、院内のCPF(Cell Processing Factory)で無菌的にPRPが製造できるかどうかを確認する試験を行った。臨床研究を開始し、前腕の尺骨神経損傷や腕神経叢損傷など5例にPRPを投与した。PRP投与による有害事象は全例で認められなかった。経過観察期間1年の間、理学所見、電気生理検査により神経再生を経時的に評価した。全症例が投与後1年を満了し、結果をまとめた。PRPは末梢神経損傷治療に安全に使用することができ、その有効性も示唆された。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
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