現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年4月現在において、脊柱側弯症患者の脊椎試料の確保が出来ずにヒトでの解析は開始できていない。一方モデル動物の解析としては、モデルラットの腰椎において、Trk, Raraと相互作用のあるBMP2の発現が低下していることを同定した。In vitroの実験で、Raraの特異的なアゴニストとレチノイン酸はRaraを通してBMP2の発現を誘導し、BMP2はtrkCの発現を誘導することが知られている。これらの結果から、Rara, Trk, のBMP2を介した相互作用の破綻によるレチノール代謝経路のダウンレギュレーションがISの椎体異常の原因である可能性が高いと考えられた。一方で、脊柱後側弯の進行に関わる因子の解析を目的として、ISの脊柱変形進行の時期の観察と、ISの腰椎におけるmiRNA解析を行った。ISの腰椎にAlcian blue, Alizarin red染色を行い脊柱の形態を確認したところ、4日、1週時点では一次骨化中心の癒合と分裂、2週から4週時点では輪状骨端核の癒合と側弯変形の進行、6週時点では癒合椎の完成を確認した。miRNA arrayによる解析ではmiR-224-5pがコントロールの2倍以上の発現上昇, miR-194-3p, miR-9a-5p, miR-96-5p, miR-182がコントロールの0.5倍以下の発現低下を認めており、このうち骨、軟骨に関わるmiR-182に関してパスウェイ解析を行ったところ、破骨細胞の分化に関わるMITF, 軟骨細胞分化を阻害するSmad7, 骨芽細胞の増殖と分化を促進するSmad1の3経路を阻害することがわかった。まとめると、ISにおいてはmiR-182の発現異常により正常な骨成長が妨げられている可能性が考えられ、このことからmiR-182が脊柱後側弯変形の進行に関与している可能性が考えられた。
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