研究実績の概要 |
本研究の目的は、先天性脊柱後側弯症モデル動物 (Ishibashi rat: IS)を用いて骨形成および形態形成関連遺伝子の発現動態と脊椎の構造異常との関係性を胎生初期から発症まで詳細に検討し、どの遺伝子がどの時期に発現低下する/過剰となることによって脊柱側弯が生じるのかを明らかにすることにある。 ISの下位腰椎におけるAdh1, Aldh1a2, RarαのmRNA発現は、WTの同部位、及びISの比較的変形の少ない下位胸椎に比べ有意に低下していた。またISの血清レチノール濃度はWTに比べ有意に高値だった。ISの下位腰椎におけるBMP-2のmRNA発現はWTの同部位に比べ有意に低下していた。ISの下位腰椎の一次骨端核におけるRarα、BMP-2陽性細胞数はWTに比べ少なかった。これらの結果から、ISの下位腰椎においては、レチノール代謝経路のダウンレギュレーションに伴うレチノールの利用障害からHox遺伝子の発現が低下し椎骨の形態異常が生じている可能性や、レチノール代謝関連遺伝子群(Adh1, Aldh1a2, Rarα)とTrkCの発現の減少によってBMP-2の産生が抑制され椎骨の形態異常を生じている可能性が考えられた。 ISの下位腰椎のmiRNA arrayによる解析では、miR-224-5pがWTの2倍以上の発現上昇, miR-194-3p, miR-9a-5p, miR-96-5p, miR-182が0.5倍以下の発現低下をしており、このうち骨、軟骨に関わるmiR-182に関してパスウェイ解析を行ったところ、破骨細胞の分化に関わるMITF, 軟骨細胞分化を阻害するSmad7, 骨芽細胞の増殖と分化を促進するSmad1の3経路を阻害することがわかった。このことからmiR-182が脊柱後側弯変形の進行に関与している可能性が考えられた。
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