椎間板変性を来す分子生物学的メカニズムを解明し、治療応用へと展開するための研究基板を作ることを目的としている。マウス椎間関節を顕微鏡下で切除することにより再現性を持って椎間板変性を惹起するモデルを樹立した。本モデルの妥当性はレントゲン所見、組織学的所見をヒト椎間板変性と比較することで行った。正常マウス、およびこのモデルを施行したマウスの術後2週の髄核、線維輪組織をレーザーマイクロダイセクションの 手法により採取した。採取した組織よりmRNAを抽出し、増幅、逆転写を行いcDNAを作成した。このサンプルをRNAシークエンスにかけることで各コンポーネントでの遺伝子発現を網羅的に解析し、髄核、線維輪の既知のマーカー遺伝子の発現よりサンプルの妥当性を検討し、椎間板変性の候補遺伝子を同定した。 具体的にはWTマウスの線維輪および髄核から採取、増幅したmRNAと変性を誘導した線維輪、髄核から採取、増幅したmRNAの網羅的解析を行い、発現量の変化率が10倍を越えるものを絞った。また、IPAを用いて椎間板変性における上流シグナルの探索を行った所TGFβシグナルが有意に低下していることが判明した。発現量が変性により著明に増加しており、TGFβシグナルに関与の報告のある遺伝子を候補遺伝子として同定した。実際に椎間板変性を誘導したマウス椎間板の免疫染色で は、これらの候補遺伝子の蛋白質は線維輪細胞で発現が上昇しており、実験結果は妥当であったと考えられた。候補遺伝子のfloxマウスをとりよせ、このマウスとRosacreert2マウスを掛け合わせが完了し、今後in vivoでの解析を行う予定である。
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