研究課題/領域番号 |
16K10812
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大島 寧 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50570016)
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研究分担者 |
石原 一彦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90193341)
高取 吉雄 東京大学, 医学部附属病院, 特任教授 (40179461)
茂呂 徹 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (20302698)
谷口 優樹 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80722165)
大嶋 浩文 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (00622359) [辞退]
筑田 博隆 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30345219) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 医療・福祉 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、脊椎インストゥルメンテーション手術に用いるインプラントの耐用年数(寿命)を延長するイノベーションとして、「動的スクリューによるメカニカルストレスに対する衝撃耐久性」と「生体親和性ポリマーによるナノ表面処理による摺動面の耐摩耗性とインプラント表面の細菌付着・バイオフィルム形成抑制効果」を有する長寿命型脊椎固定インプラントを創出するための基礎研究を行うことである。今年度は、以下の検討を行った。 1. インプラントの機械的特性の評価:ボールオンプレート摩擦試験機およびピンオンディスク摩耗試験機を用いて、MPC処理チタン合金表面の摩擦特性および耐摩耗特性を評価した。また、平成30年度の「組立品の力学的特性検討」に備え、臨床における屈曲-伸展動作に対する影響を評価するための繰り返し曲げ試験の試験系を確立した。 2. インプラントの形状・デザインの検討:三次元CADソフトウェアを用い、L1からL5までの椎体および椎間板を組み合わせた腰椎の三次元モデルを作製した。また、隣接する2椎体に対して、スクリュー4本とロッド2本を用いて、後側方固定術を模擬した状態のCADデータを作成した。 3. インプラント表面の細菌付着・バイオフィルム形成抑制効果の検討:生体内の環境を模擬した流動環境下のin vitro感染症モデルにインプラント感染の起因菌(バイオフィルム形成黄色ブドウ菌、緑膿菌など)を用い、システムを構成する材料の表面をMPC処理することで、表面の細菌付着・バイオフィルム形成が抑制されることを明らかにした。 以上の結果は、長寿命型脊椎固定インプラントを創出するための基礎検討を推進するための確信を得るに十分な結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. インプラントの機械的特性の評価(平成29年度の達成度100%): システムを構成する部品の機械的特性を評価するため、チタン合金表面にMPC処理を施し、往復摺動試験により摩擦特性を、多方向摺動試験にて耐摩耗特性を評価し、MPC処理によりそれぞれの特性が劇的に改善することを明らかにした。また、組立品に求められる力学的特性を評価するため、万能試験機を用いた繰り返し曲げ試験の試験系を確立した。 2. インプラントの形状・デザインの検討(平成29年度の達成度100%): インプラント固定下での腰椎の可動範囲を検討するため、三次元CADソフトウェアを用い、有限要素解析(FEA)のための腰椎モデルを作製した。このモデルと平成28年度のインプラントモデルを用い、隣接する2椎体をインプラントで固定した状態のCADデータを作成した。 3. インプラント表面の細菌付着・バイオフィルム形成抑制効果の検討(平成29年度の達成度100%): システムを構成する材料の表面をMPC処理し、流動環境下のin vitro感染症モデルに用いて評価した。細菌は、バイオフィルム形成黄色ブドウ菌、緑膿菌などの、インプラント感染の主要起因菌を用いた。付着・浮遊生菌数測定、蛍光顕微鏡観察、走査型電子顕微鏡観察などにより検討したところ、細菌の付着が90%以上抑制されること、及び、バイオフィルム形成が抑制されることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
1. インプラントの機械的特性の評価: 平成29年度に確立した「模擬骨を用いた繰り返し曲げ試験」の試験系にインプラントの試作品を用い、屈曲-伸展モーメント、屈曲-伸展可動域、模擬骨からの引き抜き強度などを評価することで、組立品に求められる力学的特性を評価する。さらに、ボーンスクリューの繰り返し曲げ運動に対する耐摩耗性を評価する。 2. インプラントの形状・デザインの検討: 平成28年度に作製したインプラントモデル、平成29年度に作製した腰椎モデル、隣接する2椎体をインプラントで固定した状態のCADデータを用い、腰椎全体の可動範囲をコンピューター上でシミュレーションする。また、インプラント、椎体、椎間板にかかる応力を評価する。さらに、万能試験機を用いて、動物脊椎を用いた曲げ試験を行い、インプラント実機の可動性を評価する。 3. インプラント表面の細菌付着・バイオフィルム形成抑制効果の検討:インプラント感染の主要起因菌である、バイオフィルム形成黄色ブドウ球菌などを、流動環境下におけるin vitro感染モデルに用いて、システムを構成する材料の表面に予めバイオフィルムを形成させた後、抗菌薬を作用させ、バイオフィルム形成抑制効果とこれに伴う抗生剤の抗菌作用を付着・浮遊生菌数測定、蛍光顕微鏡観察、走査型電子顕微鏡観察などにより評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
細菌付着抑制に関するを2月末から3月初めに予定していたが、試験サンプルについて新年度に予定していた、新規調整方法を前倒しで開発することができた。試験を効率的に行うため、新規調整方法でサンプルを作成を行い、4月初め(新年度)に実験を行うこととした。試験計画全体としては前倒しに進行している。
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